Sansanが信託SOで従業員らの課税約5億円を負担、「安心して働いて欲しい」

Sansanが2023年5月期通期の決算を発表し、信託型ストックオプション(SO)の対応について説明した。

信託SOについては、国税庁が「給与所得課税とみなす」という見解を示し、スタートアップの間に混乱が広がっていた。

「取締役会で長い時間かけて議論した」

Sansan

名刺や請求書管理で知られるSansan社が決算を発表し、信託SOの対応を明かした。

撮影:伊藤有

2023年5月、国税庁は信託SOについて、権利行使して株式を取得した時点で会社からの実質的な給与とみなすとして、すでに権利行使済みの信託SOは、さかのぼって会社に源泉徴収を求めるという見解を示した。

Sansanでは2019年1月に信託SOを発行しており、その割合は発行済株式総数の1.71%にあたる。うち2023年5月期末時点で権利行使済みが0.26%、未行使が1.29%だった。

7月13日の決算説明会に登壇した取締役・CFOの橋本宗之氏は、「企業価値向上へのインセンティブや優秀な人材のリテンションを目的として信託SOを発行してきたが、これまでは給与所得となる扱いをしていなかった。今回の国税庁の見解を踏まえ、権利行使済みの信託SOの源泉徴収を遡及して行う」と発表。

ただし在籍する従業員らに対しては、一定の計算式のもとで会社としてルールを定めて、追加的な税負担増の一部を会社が金銭で補填する。

また権利未行使の信託SOについても、代わりとなる給与などを金銭で支給すると話した。

「具体的な計算方法については申し上げられませんが、従業員にとって追加の税務負担がほとんど生じないよう、会社が負担します。

この決定については、取締役会も含めて非常に時間をかけて議論しました。信託SOは従業員にとって大事なインセンティブでしたし、我々にとっても大切な従業員のリテンションに影響すると思いました。

会社がサポートすることで、従業員に安心して働いてもらいたい、最大限の成果を出してもらいたいという願いです」(橋本さん)

信託SOに代わる新たな株式報酬を付与

国税庁

shutterstock / xtremeLab

従業員らの信託SOの対応にかかる費用は4億9900万円。2023年5月期の販売費及び一般管理費に計上した。

取締役への対応(権利行使済みのものはなく、権利未行使の一部の信託SOの代替的な金銭を支給する)にかかる費用は2024年5月期以降の決算に計上する予定だが、「金額的にはミニマム。ほぼ全ての金額的な影響、会計処理は2023年5月期で終わります」(橋本さん)

税処理の混乱はあったが、株式報酬は重要だ。

Sansanでは信託SOで当初想定していたインセンティブが発揮されないと判断し、新たなインセンティブとして、「株価条件付株式報酬型ストックオプション」を取締役に付与する議案を8月の株主総会に付議する予定だという。

なお、Sansanの2023年5月期通期の決算は、売上高255億1000万円(24.9%増)、営業利益9億4200万円(28.9%増)、純損失1億4100万円を計上した。

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