山内奏人さん(2022年撮影)。
撮影:伊藤圭
横浜市の実施していたポイント還元施策「レシ活」事業をめぐり、4億円分相当のポイントが有効期限前に失効したというトラブルを7月6日、報道各社が報じた。
横浜市と契約し同事業を運営していたのは、レシート買取サービス「ONE」などを企画した若手起業家、山内奏人さんが経営するWED(東京・渋谷区)だ。
7月6日の騒動以降、山内さんがTwitterのアカウントを削除したことなども、この問題が注目されるきっかけになった。
いまWEDと横浜市の間で何が起こっているのか。
渦中の山内さんがBusiness Insider Japanの質問に答えた。
※WED…山内さんが2015年、前身となるワンフィナンシャルを設立。2018年にリリースしたレシート買取りアプリ「ONE」は、スマートフォンのカメラ機能を使ってレシートを撮影すると、すぐにアプリ内のウォレットに10円が振り込まれるという仕組みで話題となった。2022年1月時点の累計ダウンロード数300万超、累計レシート買取総数2億枚以上。2020年に社名をWEDに変更。
WED側の公式発表
撮影:Business Insider Japan
山内さんをBusiness Insider Japanが初めて取り上げたのは2017年。当時、1億円を調達した17歳の気鋭プログラマーとして取材し、以降、節目ごとに活動を報じてきた経緯がある。
レシ活のポイント失効問題をめぐっては、横浜市の発表と各社の報道のあと、WEDは7月7日と10日に、それぞれこの件に対する報告を公表している。
内容詳細はここでは割愛するが、7月7日には横浜市が報告したポイント失効(WEDは不具合と表現している)の報告、続く10日に対象となるユーザーへの対応と個別アナウンスを完了した旨の報告という内容だ。
横浜市は「レシ活」事業のポイント失効に関して、7月6日時点でWEDと9回の協議を進めてきたとしており、WED側の対応協議などと経緯について、発表時点でも調整が続いていることがうかがえる報告を公表している。
WED山内CEOの回答は
山内さんへの取材は、メッセンジャーアプリを使い、編集部の質問に山内さんが応える形で進められた。
山内さんは本来なら対面取材に応じたいとする一方、横浜市との協議は現在も続いており、「現状では申し上げられないことが多い」とする。相手方があるなかで一方的には応えられない、ということのようだ。
—— 横浜市のレシ活の対応の状況について聞かせてください。WED側で7月10日に対応状況の説明が出ました。表現に曖昧な箇所があるので改めて確認ですが、基本的に横浜市で影響のあった人は全員(9.7万人、約4億円)が解消されるということで間違いないですか。
「横浜市との協議が完了していないため曖昧な表現になっておりますが、ご認識の通り全員に失効した残高を補填する方針です」
—— 横浜市の報告によると協議は9回進めてきたとしています。テレビ神奈川は、横浜市側の認識として「WED側が去年8月にポイントの期限を1年から120日に変更したことも混乱の一因」「期限の短縮について事前に知らされておらず、協議でも変更の経緯とその理由について説明を求めているが回答はない」などと報道しています。どういう状況になっているのでしょうか。
出典:7月6日付 横浜市記者発表資料
「横浜市の発表通り9回以上(横浜市の発表後も協議は続いております)、協議を進めております。例としていただいたお話は一部弊社の認識と異なるところもございますが、横浜市と足並みを揃えてからお話できればと思っております」
—— そもそも、なぜ有効期限の短縮をする必要があったのでしょうか。
「失効期限の変更は類似サービスの規約を参考に専門家と協議したところによるものです」
—— 今回のトラブルに前後して、山内さんのSNSアカウントが削除されています。なにがあったのですか。
「現在の本業が非常に多忙であり、仕事により集中するために一時的にSNSアカウントを削除しました。この一件が多くの方々からのお問い合わせを生む結果となり、皆様にご心配、ご迷惑をおかけしたことお詫び申し上げます」(原文ママ)
—— 今回、大きく報道されたこともあり、WEDの財務・経営状況も心配されます。会社の運営上の問題はありませんか。
「財務状況については、弊社が未上場のスタートアップであるため、具体的な詳細を公開することは控えさせていただきますが、現在は運営上の問題は発生していません。また、お伝えできていない前向きなニュースもいくつかかございまして、今後は良いご報告ができるよう準備を進めてまいります」
この回答のあと、山内さんは一連の問題で影響を受けたユーザーに対して、
「今回の件では、弊社の不具合において皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」
と改めて謝罪するとともに、
「なお、今回浮き彫りとなった課題に関しては、アプリの改修や、自治体との契約関係の見直しを通じて、より公益性の高い事業運営ができる形を目指してまいります。皆様のご理解とご協力を引き続きお願い申し上げます」
ともコメントした。
レシ活ポイント失効問題にあたっては、横浜市会の井上さくら議員が、市政報告会のなかで「(失効して)ゼロになったポイントはこのWEDという会社のものに(なる)」などと発言している。
山内さんの言う「契約関係の見直し」は、この指摘の部分を指すのかどうか。最後の質問として投げかけた。
山内さんは「現在も横浜市と協議しているため、こちらについて詳細については現時点で回答しかねます」と答えるにとどめた。
本件については、WEDと横浜市の協議の方向性が見えた後、改めて山内さん本人への直接取材を申し込む。