コンニャク素材に卵を再現、2.4億円調達「代替卵」ベンチャー注目の理由

オムライス

卵はさまざまな料理に使われる重要な食材だ(画像はイメージです)。

Photographed by Sheed/GettyImages

ふわふわとろとろのオムライスに、味が染み込んだだし巻き卵。なめらかな舌触りのプリンなど、「卵」は私たちの食卓に彩りを与えてくれる存在だ。

2022年末の鳥インフルエンザの流行をきっかけとした卵不足により、この春には卵の価格が300円を突破するなど高騰している。そこで注目が集まっているのが「代替卵」スタートアップだ。

8月23日、「こんにゃく粉」や「にがり」といった日本独自の植物性の原料を使って代替卵「UMAMI EGG」を開発・販売する、創業2年目のスタートアップUMAMI UNITED(ウマミユナイテッド、本社:シンガポール)が、プレシリーズAラウンドで2.4億円の資金調達を発表した。Beyond Next Ventures、ジェネシア・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資で実施する。

同社では、卵価格の高騰をきっかけに食品メーカーなどからの問い合わせが急増。2023年の秋冬シーズンには、スーパーやコンビニ経由で同社の原料を使った商品が発売される予定だ。今回の資金調達を経て、新規製品の開発や、米国やEU圏での販売開始に向けた体制構築を進めていくとしている。

「こんにゃく」や「にがり」で卵の「機能」を再現する

UMAMI EGG

画像:UAMI UNITED

ウマミユナイテッドが開発する代替卵のUMAMI EGGは、豆乳などと混ぜ合わせて使用する粉末状の商品だ。レシピに応じて使用する粉末の量は変わるが、液状の卵(液卵)の代わりとしての利用が可能だという。ホームページには、パンケーキやスポンジケーキやハンバーグのつなぎやナゲットのバッター液としての利用、さらにオムライスやたまごサンドといったレシピが並ぶ。

代替卵を開発する企業は、国内でも以前からいくつか存在している。マヨネーズで有名なキユーピーでは、植物性原材料をベースにスクランブルエッグの代替品である「HOBOTAMA」を展開。8月初旬には、代替肉ベンチャーとして知られるDAIZが代替卵開発を発表。海外ではアメリカのスタートアップであるEat Justが開発するJUST Eggも知られている。

ウマミユナイテッドがこれらの企業と大きく異なるのは、原料として「豆」由来のタンパク質を使っていないということだ。

ウマミユナイテッド山﨑寛斗代表は

「栄養素や卵の機能を考える場合、普通はどういうタンパク質を使うかを考えます。タンパク質をどこから持ってこようか…と考えて、豆などを(タンパク源として)使うわけです。私たちは考え方がそもそも違っていて、『卵の機能のこの部分ってタンパク以外でできないんだっけ』というところから製品開発をスタートしています」(山﨑代表)

と、開発における考え方を語る。

ウマミユナイテッドでは、卵の「機能」を「加熱・凝固による不可逆変性」や「保水」、「保形」、「乳化」といった要素に分解。それぞれの「機能」を再現することを目指し、原材料の探索や配合、製法に関する研究開発を進め、UMAMI EGGを実現したという。

UMAMI EGG。

UMAMI EGG。一見して、こんにゃくなどからできているとは思えない見た目だ。

画像:UAMI UNITED

山﨑代表によると一番再現が難しかったのは、加熱して固まる性質を再現することだったという。研究開発では、そこを起点に素材にアタリをつけていった。味や見た目、食感などを複合的に再現していこうとして見出したのが、こんにゃく粉やにがりといった独特な原料だった。

「こんにゃくだけだと、弾力が強すぎてプルプルしてしまうので、豆腐の技術を掛け合わせて卵を噛んだときの食感を再現しています。コクを出すために、キクラゲ旨味パウダーを作ったり……パズルのようにいろいろな要素が組み合わさってできています」(山﨑代表)

代替卵業界では、スクランブルエッグなどの「加工された卵」としての提供が多い。その点、卵の「原料としての機能」を再現したUMAMI EGGは、製菓メーカーやパンメーカーなどの食品メーカーへ提供する「原料素材」として汎用性のある使い方が可能だという。

なお、卵と同じような使い方ができる一方で、UMAMI EGGは栄養成分まで卵と完全に一致しているわけではない。

代替卵の価値は「安定供給」…だけではない

卵

Jackyenjoyphotography/GettyImage

卵不足を背景に、食品メーカーなどから引き合いが増えているというウマミユナイテッド。

山﨑代表も、

「卵のサプライチェーンを持続可能にしていくことは大きな価値になるのではないかと思っています」

と現状に対する課題意識を語る。一方で、ウマミユナイテッドはそもそも現在の卵不足をにらんで起業した会社というわけではない。

UAMI UNITEDの山﨑寛斗代表。

UAMI UNITEDの山﨑寛斗代表。

画像:UAMI UNITED

実際、創業当時である2021年12月の東京の卵価格は1キログラムあたり約210円と、今ほど高騰していなかった。山﨑寛斗代表も「まさか、創業から1年後に卵クライシスになるとは、という感覚なんです」と、当時は今ほど市場からの期待がある状況は想像していなかったと話す。

実はウマミユナイテッドは初期に「保育園や幼稚園」へと商品を展開している。

「保育園や幼稚園から、アレルギーを持っている子どももそうでない子どもも一緒におやつやご飯を食べられるようにしたいという引き合いがあって、プリンの素や、卵フリーでも美味しく作れるお菓子を提案していました」(山崎代表)

アレルギーがある人でも「卵料理」を食べることができるのは、植物性原料で作る代替卵の価値の一つだ。

加えて、山﨑代表は欧米ではエシカル消費の文脈や、アニマルウェルフェアに配慮した製品づくりが求められる流れもできていると指摘。今は供給不安による「卵価格の高騰」が注目され、代替卵需要もそれによる一時的なもののように感じるかもしれないが、代替卵の需要は仮に供給不安がなくても徐々に高まっていくと考えられるわけだ。

「日本では『卵価格が上がったから代替卵を』と短期的に見ている人も多いのが現状かもしれません。もちろん中には『次もまた起きるかも』と、準備に動いているところもありますが。

ただ、ドイツなどではその視点で見ていないと感じています。エシカル、サステナブルという観点から(代替卵を)やっていかなきゃいけないという前提があるように感じています」(山﨑代表)

そういった意味でも、早めに海外展開に向けた準備を進めていくことが代替卵スタートアップとして生き残るための重要な戦略と言えるだろう。

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