プラチナバンドの商用サービスをスタートした楽天モバイルの三木谷浩史会長。
撮影:小山安博
楽天モバイルは6月27日、いわゆるプラチナバンドと呼ばれる700MHz帯での商用サービスを開始した。
これまでの周波数帯域に比べて遠くまで電波が飛び、屋内への浸透率が高いため、特に地方のカバーエリアの穴を埋める役割が期待されている。
27日の会見に登壇した楽天モバイルの三木谷浩史会長は、「ついに楽天モバイルがプラチナバンドを手に入れた」とアピール。楽天モバイルでは、前倒しで開設計画を達成していくことを目指す考えだ。
1年半ほどの前倒しでサービス開始
楽天モバイルは2023年10月に総務省からプラチナバンドの割り当てを受けた。当初は2026年3月頃にサービスを開始する計画だったが、1年半ほど前倒してのサービス開始となった。
ユーザーからのプラチナバンドへの高い期待に応えるためだ。
現時点ではプラチナバンド対応基地局を1局開設しただけだが、今後順次基地局を設置していく予定。
設備投資額は544億円。1万661局を開設する計画で、最終的に人口カバー率は83.2%になる見込みだ。
楽天モバイルの開設計画。
出典:総務省
楽天モバイルはOpen RANによる完全仮想化ネットワークを特徴としており、新たな周波数帯を基地局に追加する際のコスト面での優位性をアピールしている。
矢澤俊介社長。
撮影:小山安博
楽天モバイルの矢澤俊介社長によると、今回の場合、基地局に700MHz帯に対応した無線機を設置すれば、「そこから先はすべてソフトウェア」で対応可能だという。
物理的な機材を変更することなく、ソフトウェアアップデートで対応できるため、「コストを圧倒的に下げられる」としている。
楽天モバイルの基地局では、無線機を併設すれば「Open RAN」「仮想化」で効率よく700MHz帯に対応できるという。
出典:楽天モバイル
700MHz帯を設置する基地局に関しては、ほぼ既存基地局への追加という形で開設する計画で、「(新規基地局が)ゼロではないがそれほどはない」と三木谷氏は話す。
従来の1.7GHz帯に比べて電波が遠くまで飛んで屋内まで浸透しやすくなることから、カバレッジの穴となる場所に電波が届くような、補完的な位置づけとなる見込み。「利用者の満足度を向上させるように拡大していく」(矢澤氏)考えだ。
既存の穴となっているようなカバレッジホールを埋めるように設置していく。
出典:楽天モバイル
ただ、楽天モバイルが得ている700MHz帯は3MHz幅と、帯域幅が限られている。
帯域幅の狭い700MHz帯に通信が集中して「パケ詰まり」などの問題が発生しないように、1.7GHz帯が活用できるエリアであれば優先的に接続するように制御するなどの調整を実施する。「こうしたシステムはOpen RANが一番力を発揮できる」と矢澤社長は自信を見せる。
三木谷氏「携帯市場の民主化を届けたい」
50カ月で700万回線を突破。
出典:楽天モバイル
楽天モバイルがMNO事業を本格スタートしてから約4年2カ月が経過した。
6月16日には個人・法人を合わせた契約数は700万回線になった。当面は1000万加入を目指していく。
三木谷氏は1000万回線の早期達成に自信を見せている。楽天のサービスでは楽天カードが3000万枚を突破しているが、カードに比べて楽天モバイルは「1.8倍のスピードで契約数を増やしている」とする。
楽天カードと比べても契約数の増加は早いペース。
出典:楽天モバイル
現在はKDDIとの新ローミング契約も踏まえて人口カバー率99.9%と他社並みになっているが、自社エリアも順調に拡大しており、ネットワーク面でも高評価を得ていると三木谷氏。
特に「なんちゃってではなく本当の5G」(三木谷氏)をどんどん増やしていく考え。さらに、衛星干渉によって抑えられていた基地局の出力を上げられたことで、関東地方では最大1.6倍まで5Gのエリアが拡大するという。
衛星干渉の緩和によって出力がアップしてエリアが拡大。
出典:楽天モバイル
「ソフトウェアアップグレードでさらに品質を上げていく」と三木谷氏。
4Gと5Gを共存させるネットワークは設計が難しいという。ただ、楽天モバイルは自社でソフトウェアを開発しているため、4Gから5Gへのハンドオーバーがスムーズにできている、そうだ。
5Gのトラフィックは約2.3倍に、ユニークユーザー数は約1.5倍に改善したうえに、通信速度下り50Mbps未満の低速セルの割合が減少し、高速セルの割合が上昇するといった効果も出ており、「楽天モバイルは進化していくネットワーク」だと三木谷氏はアピールする。
ソフトウェアアップグレードと送信出力アップでトラフィックとユーザー数が増加している。
出典:楽天モバイル
今後はプラチナバンドの拡大に加え、2026年に衛星通信のAST SpaceMobileとの通信を実現させる予定。
すでに2023年4月には衛星とスマートフォンの直接通信の試験に成功。2024年5月にはハワイとの通信にも成功し、準備が進められている。
衛星との直接通信が実現することで、人口ではなく面積カバー率で100%が実現できると三木谷氏は強調する。
AST SpaceMobileとの協業による国内サービスを2026年に提供。
出典:楽天モバイル
地下鉄のトンネル内などでのネットワーク改善も進めており、今後さらに状況は良くなっていくと三木谷氏。
「安くて便利で無制限で速い、クオリティも高い。Rakuten Linkを使えば音声もSMSも無料で海外でも2GB無料。そんな楽天モバイルで携帯市場の民主化を届けたい」と三木谷氏はアピールした。
会見では三木谷氏がスイッチを押すと700MHz帯の送信がスタートするという体のセレモニーが実施された。
撮影:小山安博
当日は、対応基地局が1局あるというエリアと中継をつなぎ、「Band28」に接続していることを示して、700MHz帯につながっていることを主張。スペクトルアナライザの画面も示してアピールしていた。
撮影:小山安博
矢澤社長も、「携帯業界は競争が進んでいるが、リードしているのは楽天モバイル。黒字化にも自信がある。満足してもらえるように一歩一歩進んでいきたい」と話している。