やめておけば良かった?
Andrew Harnik/Getty Images
- アメリカのバイデン大統領は、11月の大統領選を前に開かれた最初の討論会で苦戦した。
- バイデン大統領は、史上最も早い時期に討論会を開催するよう働きかけた。
- バイデン大統領のパフォーマンスを受け、大統領の"年齢"に対する懸念が再び沸き起こりそうだ。
アメリカのバイデン大統領は11月の大統領選を前に、史上最も早い討論会を望んだ。誰もいない会場、ミュートされたマイク、Fox News… 望んだもの全てを手に入れた。
そして、民主党の有力議員たちが続投できるのかどうかすら疑わしく思うような悲惨なパフォーマンスを見せた。
「この討論会の冒頭での彼の出方には、実際にショックがあったと思う」とオバマ政権で大統領上級顧問を務めたデイビッド・アクセルロッド(David Axelrod)氏はCNNに語った。
「彼の声は… 討論の最初の方はやや混乱しているように見えた。討論が進むにつれて彼は力強さを増したが、その頃にはパニックに陥っていたと思う」
アクセルロッド氏や他の民主党員たちは、バイデン大統領がいくつかのジャブを浴びせたことを評価しようとしたが、バイデン氏が史上最高齢の大統領であり続けることについて、党の有力者たちが何カ月も議論を退けてきた中、彼らの懸念が噴出した。
「ジョー・バイデンの討論会でのパフォーマンスは、実に残念なものだった」と、バイデン政権で広報部長を務めていたケイト・ベディングフィールド(Kate Beddingfield)氏はアクセルロッド氏に続いて指摘した。
「他に言いようがないと思う。彼の最大の課題は、エネルギーとスタミナがあることをアメリカ国民に証明することだった。そして、彼はそれをしなかった」
CNNのヴァン・ジョーンズ(Van Jones)氏は取り乱したようだ。
「耐えられなかった。わたしはジョー・バイデンが大好きで、ジョー・バイデンのために働いたこともある」
「彼は全くうまくいかなかった」
カマラ・ハリス副大統領までもが、大統領が苦戦したことを認めた。
「確かにスロースタートだったが、フィニッシュは力強かった」とハリス副大統領は討論会の後、CNNに語った。
ひいき目に見ても、バイデン大統領はいくつかの主要激戦州であと一歩のところまで来ているものの、ほとんどミスが許されない選挙戦に、活を入れるチャンスを台無しにしてしまった。最悪の場合、そのかすれ気味の声ととりとめのない回答は、トランプ前大統領に負ければ、わたしたちが知っているアメリカは終わると警告する、大統領の"最後の重要な意味を持つ言葉"になるかもしれない。
有力な民主党員たちは、バイデン大統領が予備選で厳しい戦いを挑まれることがないよう支えてきた。最近の現職大統領で、予備選の挑戦者と討論した者はいない。ただ、最近の現職大統領で、アメリカ史上最高齢の大統領もいなかった。そしてバイデン大統領自身の見解では、トランプ前大統領ほどアメリカに根本的なリスクをもたらす挑戦者はいなかった。
ホワイトハウスの元補佐官は、バイデン大統領のパフォーマンスは「ひどかった」とPolitico語った。
"絆創膏"がはがされたのは、元特別検察官のロバート・ハー(Robert Hur)氏が今年2月にバイデン大統領を刑事訴追しない判断を下したのは、陪審員が大統領を「悪意のない、記憶力の乏しい高齢者」と見なすかもしれないからだと発言したのがきっかけだった。バイデン大統領はそうした疑念の一部を、熱を帯びた一般教書演説で静めた。
しかし、27日の討論会が進むにつれ、その疑念が甦った。
「あのような状態で上司を全国放送に送り出すなんてありえない」と下院民主党の院内総務を務めるハキーム・ジェフリーズ議員の元側近マイケル・ハーダウェイ (Michael Hardaway)氏はX(旧Twitter)に投稿した。
「どれをやっても、ジョー・バイデンにとってまったくプラスにならない」
黒人有権者のための団体「コレクティブPAC」の共同設立者であるクエンティン・ジェームズ(Quentin James)氏は、バイデン大統領の声の状態の悪さに驚いたとニューヨーク・タイムズに語った。
「一般教書演説や選挙遊説と比べて、討論の準備をしすぎたのではないかと思う」とバイデン大統領を支持してきたジェームズ氏は指摘した。
「音域がとても狭い。かすれ声は彼のパフォーマンスに悪影響を及ぼしている」
2020年の大統領選で、民主党の候補指名獲得を目指したアンドリュー・ヤン(Andrew Yang)氏も、討論会の終了間際に「民主党は他の誰かを指名すべきだ… 手遅れになる前に。#swapJoeout」とXに投稿した。
複数のメディアがバイデン大統領は風邪をひいていたと報じたが、Politico Playbookのユージン・ダニエルズ(Eugene Daniels)氏が指摘したように、大統領の体調不良については、討論会が始まる前に言及はなかった。
バイデン大統領は"カウントアウト"されるのが好きだ。2016年の大統領選では、オバマ大統領が民主党の大統領候補として一番いいと考えてはいなかったと、ハー氏に語ったほどだ。オバマ大統領の選対本部長だったデビッド・プルーフ(David Plouffe)氏はバイデン氏に対し、何十年にもわたる彼のキャリアを、アメリカで最初に行われるアイオワ州の党員集会で、大きく引き離された結果で終わらせたくないと戒めたと報じられている。
その後、アイオワ州の党員集会での惨敗を乗り越え、民主党の候補指名だけでなく、大統領職をも勝ち取って、バイデン氏が最後に笑った。
同じくオバマ大統領の側近だったアクセルロッド氏は今年、バイデン大統領の年齢について懸念を表明したことで、大統領を苛立たせたと報じられている。大統領は耳を傾けるべきだったと口にする民主党議員もこれから出てくるだろう。
ただ、党員集会の結果が悪いからと言って、バイデン大統領を追い込むことはできないだろう。それができるのは、ジョージア州で行われた悲惨な討論会だけかもしれない。
バイデン大統領の支持率はすでにひどいことになっていた。そして今、その最大の弱点である年齢に関する話がほぼ確実に増えていくだろう。