【イギリス政権交代】 ラミー外相が初の外国訪問 英・EU関係を「リセットする」

イギリスのデイヴィッド・ラミー新外相(右)とポーランドのルドスワフ・シコルスキ外相

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画像説明, イギリスのデイヴィッド・ラミー新外相(右)とポーランドのルドスワフ・シコルスキ外相

ポール・アダムス、BBCニュース

イギリス労働党政権のデイヴィッド・ラミー新外相が、就任早々、矢継ぎ早に各国を訪問している。これは、すぐに結果を求めたり、ましてや新たな地平を開いたりするためではない。

今回の外遊は全て、人々に認識してもらうためだ。新しい活力に満ちた政権が、イギリスの最も重要な友好国に対し、やる気と好意を持っていると思ってもらうためだ。

ラミー外相は6日夜、ドイツでアナレラ・ベアボック外相と会談。両外相はこの時、数分間だけだが、欧州サッカー選手権の準々決勝戦(イングランド対スイス)を観戦した。

ラミー氏はその後、ポーランドを訪れ、ルドスワフ・シコルスキ外相の、田園地帯にある邸宅に移動。ここで数時間、会談すると、また飛行機に戻り、北大西洋条約機構(NATO)の新メンバー、スウェーデンへと向かった。

なぜドイツ、ポーランド、そしてスウェーデンなのか。

その答えの一部はウクライナだ。これら3カ国はイギリスと共に、ウクライナの戦争継続で重要な役割を担っている。イギリスのジョン・ヒーリー新国防相も早速、ウクライナ南部オデーサを訪問している。サー・キア・スターマー率いる新政権は、イギリスのウクライナへの貢献が引き続き堅固だと強調したいのだ。

ヒーリー国防相は、オデーサでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領やルステム・ウメロフ国防相と会談。イギリスはさらに多くの大砲や、弾薬25万発、100基近くの空対地ミサイル「ブリムストーン」を提供すると発表した。

「政権交代があったかもしれないが、イギリスはウクライナのために団結している」とヒーリー氏は述べ、軍事援助拡大による支援の「再活性化」を約束した。

また、100日以内に支援物資が届くよう、迅速な対応を約束した。

ラミー外相も、「ウクライナへの支援を倍増したい」と述べた。

イギリスのジョン・ヒーリー新国防相とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領

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画像説明, イギリスのジョン・ヒーリー新国防相(左)とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領

広範囲に影響を及ぼすとされた選挙の真っ最中だったフランスは、今回の旅程には含まれていなかった。少なくともこの週末には予定されていなかった。

ベルギー・ブリュッセルの欧州連合(EU)本部にも立ち寄らなかった。スターマー首相は、「私の生きている間には」イギリスはEUに復帰しないと語っている。

しかし、ポーランドとスウェーデンは、どちらも重要な欧州の友好国であり、NATOの加盟国だ。イギリスの新外相が、将来の緊密な関係を模索し始めるには良い場所だ。

「私は二国間関係と、イギリスとEUとの関係、どちらもリセットしたい」と、ラミー氏は述べ、労働党がまだあいまいなままにしている、英・EU間の新たな安全保障協定締結の公約に言及した。

スターマー首相も7日にエディンバラを訪問した際、イギリスとEUとの関係改善に向けた取り組みが始まっていると述べた。

また、労働党政権は「ボリス・ジョンソン(元首相・保守党)がイギリスに押し付けた失敗作よりも、はるかに良い取引ができる」と話した。

18日には、欧州政治共同体(EPC、ロシアのウクライナ侵攻を受けてフランスのエマニュエル・マクロン大統領が設立)がイギリスのブレナム宮殿で開かれる。ラミー外相は、この首脳会議で「新たな協力の精神が示されるだろう」と述べた。

ラミー新外相の懸念はロシア、中国、ガザ地区

この訪問は、スターマー首相が米首都ワシントンで開かれるNATO首脳会議で、首相として初めて国際舞台に立つ数日前に行われた。

フランスが右傾化し、アメリカでは予測不可能なドナルド・トランプ前大統領が再び大統領になる可能性もある中、関係を強化するには難しい時期だ。

ラミー氏も、現在が「厳しい地政学的な瞬間」であると認めたものの、成熟した民主主義国家間の意見の相違と、権威主義体制がもたらす脅威とを混同しないことが重要だと述べた。

「ウクライナでイラン製のドローン(無人機)が発見されると、私は懸念を覚える」

「欧州で北朝鮮の砲弾が使われているのを見ると心配になる」

「もちろん、ロシアが独裁国家間で仲介するパートナーシップについても懸念している」

ラミー氏の初外遊には、パレスチナ自治区ガザでの戦争をはじめ、他の問題も重くのしかかっている。

攻撃されたウクライナの家屋

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6日の訪独時、ラミー氏は「イスラエルとガザの問題について、もっとバランスの取れたアプローチ」が必要だと指摘した。

これが何を意味するのかは正確には分からないが、停戦交渉が再開される見込みであることから、ガザでの戦争を終結させ、アラブ諸国とイスラエルの和平プロセスを再開する方法を見つけることが、今後数カ月間の外交上の大きな課題となるだろう。

これに対し、イギリス好きとして知られるポーランドのシコルスキ外相は、ポーランドの新政権とスターマー新政権には共通点があると述べた。

シコルスキ氏は、両政権が「政治のナショナリスト的な側面に熱狂する支持者に、国民がうんざりした末に生まれた」ものであると述べた。だがこの発言は、先週の総選挙の真の姿を部分的にしか反映していないかもしれない。

シコルスキ氏はまた、イギリスが欧州との関係において「より現実的なアプローチ」をとることを期待していると述べ、ラミー氏と「それをさらに進めるためのいくつかの創造的なアイデア」について話し合ったと語った。