フランス議会下院選、左派連合が最大勢力に 極右は予想外の失速

支持者集会で演説するメランション氏
画像説明, 左派連合「新人民戦線」の最大政党「不屈のフランス」のメランション党首は支持者を前に演説した(7日)

フランスで7日、国民議会(下院、577議席)選挙の決選投票が行われ、左派連合の「新人民戦線(NFP)」が182議席を獲得し、第1勢力となる見通し。

現地メディアは、エマニュエル・マクロン大統領の与党連合が168議席で第2党となり、この選挙での勝利が広く予想されていたマリーヌ・ル・ペン氏率いる極右「国民連合(RN)」は143議席と予想外に失速し、3位となったと報じた

「国民連合」は6月30日の第1回投票で、与党連合を抑えて首位に立った。

その後はあらゆる世論調査で、「国民連合」が決選投票で勝利するとの予測が示されていた。

しかし実際は、過半数議席を握る政党がない「宙づり議会」が誕生することとなった。

「国民連合」のジョルダン・バルデラ党首は「不自然な政治的同盟関係」によって、同党の政権奪取が妨げられたと非難した。

わずか6カ月前にマクロン氏から首相に任命されたばかりのガブリエル・アタル氏は、与党連合は当初の予想の3倍の議席を獲得する勢いだとしつつ、8日午前に辞表を提出するつもりだと述べた。

アタル首相は、「明日(8日)朝に辞表を提出する」、「新しい時代が、今夜始まる」と述べた。

また、極右を支持した数百万人の有権者に対しては、「私はあなた方一人ひとりに敬意を払う。フランス人には、正しい票を投じた人と間違った票を投じた人という区分はないからだ」と語った。

獲得議席数

与党連合と左派が「不誠実な同盟」と

アタル氏が辞任を決断した背景には、主に左派連合とマクロン陣営の217人が、「国民連合」を破るのを助けるために選挙戦から離脱したこともある。

第1回投票の結果を受け、主に地方選挙区レベルで、「国民連合」の議席獲得を阻止するために3番手の候補が選挙戦から撤退するかどうかが注目されていた。

左派連合と与党連合のこの選挙協力をめぐっては、多くの国民が不満を抱いた。しかし、今回の結果は、第1回投票では中道派や左派を支持した有権者が、その1週間後には極右が議会を掌握するのを防ぐことだけを目的に、ライバル政党へと支持を移したことを意味する。

「国民連合」のバルデラ党首は、「不誠実な同盟」である選挙協力によって、何百万人もの有権者がフランスの生活費危機への対応を奪われたと訴えた。

「我々は権力のために権力を欲しているのではない。フランス国民に権力を手渡すために権力を欲しているのだ」と、バルデラ氏は支持者に語った。

同党のセバスチャン・シェニュ氏は、マクロン氏の与党連合が左派の勝利を可能にし、マクロン氏が作り出した「苦境」の中にフランスを置き去りにしたと非難した。

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この同盟はフランスを「宙づり議会」だけでなく未知の領域へと向かわせることとなった。

左派連合の最大政党「不屈のフランス(LFI)」は、急進的なジャン=リュック・メランション氏が率いており、極左政党と広くみられている。

フランスのTF1テレビは、「不屈のフランス」が左派連合で最多の94議席を獲得するとの予測を伝えた。

メランション氏は支持者に対し、「マクロン大統領の敗北は明らかだ。大統領は敗北を受け入れなければならないし、アタル首相は身を引かなければならない」と述べた。

それから1時間余りで、アタル氏は辞意を表明。同氏の今後はマクロン氏の手に委ねられることとなった。

フランスは26日から始まるパリ・オリンピック期間中、安定した政権を必要としている。

アタル氏は「任務を必要とされる限り」留任する用意があると述べた。

しかし、アタル氏の留任を望む人は左派連合「新人民戦線」にはほとんどいない。

「大統領には、我々、新人民戦線に政権を任せる権限と義務がある」と、メランション氏は述べた。

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フランスの安定は

マクロン氏は先月、���州議会選挙でル・ペン氏率いる「国民連合」が同国で大勝する見通しとなったことを受け、議会下院を解散し総選挙を実施すると発表した。

そのため、「不屈のフランス」のほか、緑の党や共産党、社会党などは急きょ左派連合を結成した。

緑の党のマリーヌ・トンデリエ党首は、左派連合は国を治める用意が出来ているという意見に同調した。「我々は勝利し、これからフランスを治める」。

一方で、今は新たな首相を立てる時期ではないとした。

社会党のオリヴィエ・フォール党首は「フランスは極右が政権を握ることにノーと言った。極右はフランス国民を分断する選択をした」と述べた。

フランスで最も評価の高い政治家の一人で、マクロン政権下で首相を務めた、エドゥアール・フィリップ氏は、今回の選挙がフランスに大きな不安をもたらしたと指摘した。

また、国民の「圧倒的多数」が極右「国民連合」にノーを突きつけた一方で、左派に過半数議席を与えることもしなかったと述べた。そして、数週間にわたる緊張状態を経た今、再びフランスを安定させる取り決めを模索できるかは、中道派次第だと、フィリップ氏は述べた。