【イギリス政権交代】 スターマー内閣、土曜に初閣議 不法入国対策で前政権の移送案廃止
![スターマー政権初の閣議が首相官邸で開かれた(6日、ロンドン)](https://cdn.statically.io/img/ichef.bbci.co.uk/ace/ws/640/cpsprodpb/5d9c/live/bef5f540-3c38-11ef-a044-9d4367d5b599.jpg.webp)
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英労働党を率いて4日の総選挙で14年ぶりの政権交代を実現したサー・キア・スターマー新首相は、5日の就任と組閣を経て、6日に初閣議を開いた。土曜日の閣議は珍しい。
首相官邸で新内閣を迎えたスターマー首相は、「やるべきことが大量にあるので、今から仕事に取りかかる」とあいさつした。
初閣議のため首相官邸に入ったウェス・ストリーティング新保健・社会福祉担当相は記者団に対して、「すぐさま仕事を始める」のだと述べた。保健相はすでに、公的医療の国民保健サービス(NHS)について、「今日から保健省は、NHSが壊れているという前提で動く」と表明している。NHSは資金・人手不足などが原因で、診察待ちの長期化が深刻化している。
閣議に臨んだブリジット・フィリップソン新教育相も同様に、新政府には「ただちにやるべきことがたくさんある」のだと記者団に話した。
デイヴィッド・ラミー新外相は閣議後早々に初の外国訪問に臨み、ドイツを訪れた。
5日に首相官邸前で首相として初の演説をした際、スターマー首相は「国を再建」する仕事を「ただちに」開始すると約束していた。
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不法移民の移送計画を廃止
スターマー首相は、閣議後には首相として初の記者会見を開き、保守党政権が進めていた不法入国者をルワンダへ移送する計画について、廃止を宣言した。
保守党政権中も国内でさまざまな異論のあったルワンダ移送計画について、スターマー首相は「完全におしまい」だと表明。そもそも、小型ボートでイギリスを目指す移民の「1%未満」しか移送対象にならない仕組みだったため、「抑止効果がなかった」と記者団に話した。
リシ・スーナク前首相は7月初めにもルワンダ移送を開始すると表明。イギリス政府は4月末から、亡命申請中の不法入国者を拘束していた。保守党政権下の内務省は、拘束した人数を公表していなかったものの、BBCの取材によってその人数が220人に上っていたことが分かった。
![首相として初の記者会見に臨んだスターマー氏(6日、首相官邸)](https://cdn.statically.io/img/ichef.bbci.co.uk/ace/ws/640/cpsprodpb/2203/live/8487d980-3c3a-11ef-bbe0-29f79e992ddd.jpg.webp)
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労働党政権で新しく内相になったイヴェット・クーパー氏は、国境警備強化のための責任者人事を夏にかけて行う方針を示した。また今月17日に予定される議会開会に際して、新政権の施政方針を表明する国王演説に、新しい国境安全法案の説明を含めたいとしている。
内務省報道官は、ルワンダ移送計画は「とんでもないまやかし」だったと批判。「この計画がうまくいくと前首相がもし本気で信じていたなら、最初の移送フライトが出発する前に総選挙を実施などしなかったはずだ」と述べた。
「選挙戦の最中に前政権は、ルワンダ移送を待つ間、拘束されていた人のうち218人を保釈していた。現時点で拘束されているのは2人のみで、この2人も数日中に保釈される」と、内務省報道官は明らかにした。
内務省はさらに、密航手配業者の摘発を強化するため、国家犯罪対策庁の権限拡大へ向けた計画を進めていると確認した。
![初閣議に向かう���ヴェット・クーパー新内相(6日、ロンドン・ダウニング街)](https://cdn.statically.io/img/ichef.bbci.co.uk/ace/ws/640/cpsprodpb/c8ff/live/31b45900-3c39-11ef-bbe0-29f79e992ddd.jpg.webp)
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各国首脳と電話
スターマー首相は6日午前には、各国首脳との電話会談も相次ぎ行った。日本、インド、オーストラリア各国の首相たちとは、気候変動や経済成長などを話し合ったという。
官邸報道官によると、日本の岸田文雄首相との電話会談では、中東やウクライナでの戦争について話し合った。
インドのナレンドラ・モディ首相との電話会談では、防衛、新興技術、自由貿易協定締結の可能性などが主な話題になった。
アンソニー・アルバニージー豪首相との電話会談では、英・豪・米のパートナーシップ強化や、今年後半にサモアで開かれる英連邦首脳会議について話したという。
6日の記者会見でスターマー首相は、5日にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話で会談し、防衛援助の提供を「揺ぎなく」継続すると約束したことを明らかにした。
スターマー首相は前日の5日には、すでにジョー・バイデン米大統領と電話で会談し、イギリスとアメリカの歴史的な「特別な関係」の強化について合意した。北アイルランド和平合意の成果を守ることや、ウクライナ支援の継続についても合意したという。
官邸によると、ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長との電話会談では、気候変動や地域の安全保障など、共通の「課題」に取り組む上で、「イギリスと欧州連合(EU)の独特な関係の重要性を強調した」という。
スターマー首相は6日の記者会見で、首相として初の外国訪問は、9日にワシントンで開かれる北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議になると明らかにした。
今月18日には、イギリスで開かれる欧州政治共同体の首脳会議の議長を務める。