【イギリス政権交代】スターマー英首相、新内閣を発足 財務相に初の女性

バイデン米大統領と電話で話すスターマー新英首相(5日、英首相官邸)

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4日の総選挙で政権が交代したイギリスで、キア・スターマー新首相は就任初日の5日、組閣人事を発表した。女性初の財務相にレイチェル・リーヴス氏を、副首相に労働党副党首のアンジェラ・レイナー氏を任命した。閣僚25人中11人が女性で、女性の入閣は過去最多となった。

スターマー氏率いる労働党は4日の��院(定数650)総選挙で、221議席を増やして412議席の単独過半数を獲得。14年ぶりに政権を奪還した。労働党の首相が誕生するのは、2010年に退任したゴードン・ブラウン氏以来。

スターマー首相は5日午後に行った首相官邸前での初演説で、「奉仕の政府」を作り政治への信頼を回復すると約束した。

その後の組閣では、ほとんどの閣僚が野党時代の「影の内閣」からそのまま移行した。

外相にはデイヴィッド・ラミー氏が、内相にはブラウン政権下で住宅担当相などを歴任したイヴェット・クーパー氏が就任した。

動画説明, 【全訳】 イギリスのスターマー新首相、官邸前で演説 国民への奉仕と国の再建を強調

スターマー氏は事前に、自分が首相に就任した場合に誰を閣僚に起用するつもりなのか詳細を明かしていなかった。

しかし、5日に新首相に就任すると、時間のうちに組閣人事が次々と発表された。計画が長い間、練られていたことがうかがえる。

レイナー新副首相は地域活性化・住宅・コミュニティ担当相も兼務する。

閣僚の大半は国公立の学校で教育を受けた人物が占め、私立校に通っていたのは3人にとどまった。

ブラウン政権で閣僚を務めたベテラン議員2人も起用され、エド・ミリバンド元党首がエネルギー安全保障・ネットゼロ相、ヒラリー・ベン氏が���アイルランド担当相にそれぞれ就任した。

ラミー新外相や、パット・マクファデン新ランカスター公領担当相、ジョン・ヒーリー新国防相もブラウン政権の閣僚経験者(閣外相含む)。

スターマー政権の新閣僚はいずれも、2016年の欧州連合離脱(ブレグジット)の是非を問う国民投票ではEU残留を支持した。しかしスターマー氏は総選挙に先立ち、自分が生きているうちはEU単一市場に再び加わる可能性はないと表明していた。

女性初の財務相が誕生、予想外の人事も

財務相の公邸、ダウニング街11番地の前に立つ、リーヴス新財務相(5日、ロンドン)

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イギリスに財務長官の職ができて708年になる歴史の中で、リーヴス氏は女性として初めて、政府で2番目に重要なこの役職に就く。

オックスフォード大学とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)出身で、イングランド銀行(中央銀行)のエコノミストだった新財務相は、「これを読んでいるすべての若い女の子と女性へ。あなたがたの野心に制限などあってはならないと、今日が示しています」と述べた。

財務省の新チームに対しては、自分は「我々が直面している課題の規模について厳しい認識を持っている」と語った。

そして、「長い道のりが待っている」とし、簡単に解決できるとは約束できないと述べた。

「私たちは新しいチームで、新しいスタートを切る。さあ、仕事を始めましょう」と、リーヴス氏は付け加えた。

新外相のラミー氏は、ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)と米ハーヴァード大ロースクール出身の弁護士でもある。今回の組閣で外相に任命されたことは「一生の名誉」だとソーシャルメディアに投稿した。

さらに、世界は「大きな課題に直面している」が、「イギリスの巨大な強みをいかしてそれらのかじを取る」つもりだと、新外相は書いた。

最優先課題については、「欧州のリセット、グローバルサウス(世界の南側に偏っている途上国)との関係のリセット、そして気候対策におけるリセット」だと、新外相はBBCに語った。

ラミー氏は以前、アメリカのドナルド・トランプ前大統領を「女性嫌いで、ネオナチに共感するソシオパス(反社会的人格障害者)」と呼んだことがある。仮にトランプ前大統領が再選した場合、この発言が労働党政権との関係を悪化させるのではないかとBBCが尋ねると、ラミー氏は「ホワイトハウスに誰がいようと、私は緊密に連携する」と答えた。

ラミー新外相

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画像説明, ラミー新外相はイギリスと同盟各国との関係を「リセット」すると約束した

新内閣の顔ぶれは、ほとんどがスターマー氏率いる影の内閣を引き継いだものだが、予想外の人事も含まれている。

スターマー氏は法務長官に、労働党のエミリー・ソーンベリー影の法務長官ではなくリチャード・ハーマー氏を選んだ。

ハーマー氏はスターマー氏が法廷弁護士だったころからの友人。上院(貴族院)議員となるために一代貴族の称号を与えられる予定という。

組閣人事は次の通り――。

サー・キア・スターマー:首相

アンジェラ・レイナー:副首相兼地域活性化・住宅・コミュニティ担当相

レイチェル・リーヴス:財務相

パット・マクファデン:ランカスター公領担当相

デイヴィッド・ラミー:外相

イヴェット・クーパー:内相

ジョン・ヒーリー:国防相

シャバナ・マフムード:大法官兼司法相

ウェス・ストリーティング:保健・社会福祉担当相

ブリジット・フィリップソン:教育相

エド・ミリバンド:エネルギー安全保障・ネットゼロ相

リズ・ケンドル:労働・年金担当相

ジョナサン・レノルズ:ビジネス・貿易担当相

ピーター・カイル:科学・革新・技術担当相

ルイーズ・ヘイグ:交通相

ステーヴ・リード:環境・食料・農村地域相

リーサ・ナンディー:文化・メディア・スポーツ相

ヒラリー・ベン:北アイルランド担当相

イアン・マリー:スコットランド担当相

ジョー・スティーヴンズ:ウェールズ担当相

ルーシー・パウエル:枢密院議長兼下院院内総務

スミス女男爵:王璽尚書兼貴族院院内総務

アラン・キャンベル:下院院内幹事長

ダレン・ジョーンズ:影の財務副大臣

リチャード・ハーマー:法務長官