こんにちは。1分トークコンサルタントの沖本るり子です。

実は私は、アナウンサーや司会者などのようにもともと話す仕事をしていたわけではありません。

これまで人前で話すこととは程遠い経理やシステムエンジニアといった仕事をしてきました。

特に専門的に話すことを学んだのではなく、日々の生活や仕事で伝え方に失敗して次第にコツを見つけてきたわけです。

そこで、私が日頃伝える技術をどうやって学び、身につけてきたのかまとめて見ましょう。

今回は、より実践的に買い物時の値段交渉をベースに伝えるコミュニケーションのコツを紹介します。

1. ダメもとで伝えて学ぶ

自分の伝え方の良し悪しの結果がすぐわかるタイミングのひとつが、店頭で商品を購入するとき値引きをしてもらえたかどうか。

学生の時、あるお店でほしいなと思う商品がありました。お店ではすぐに手の届かないような位置に置かれている商品。じっと見ていると、その商品が汚れているのです。

そこで、商品近くに立っていた店員さんに他に在庫はないのかと確認するとその飾ってある商品しかないとのこと。

もちろんきれいな商品が欲しかったのですが、我慢して買うことにしました。が、しかし、汚れているのに定価で買うのにはとても抵抗が…。

そこで、最初に声をかけた頼りなさそうな店員さんではなく、年配の店員さんを探し、その商品を下におろしてもらい汚れていることを指摘してみました。すると少し値引きをしてくれました。

単純で当たり前のことですが、こういった経験を踏まえて、ダメもとでも思っていることは、できるだけ伝えてみるようにしたのです。

2. 結論から言わなかった後悔に学ぶ

社会人になり、出張先の東京にあった小さな雑貨店でのこと。

ある商品を買うのにまとめて10個買うので、少し値引きしてもらいたいと考えていました。しかし、なかなか値引きしてくれとは言いにくいものです。

お店の人が、率先して『値引きしましょう』と言ってくれたらうれしいのですが、なかなかそんなに世の中甘くなく、レジでは年配の店員さんがせっせと清算中です。

そこで、またダメもとでも…と値引きのお願いをしてみました。

すると、その店員さんが、

「あらぁ、もっと早く言ってくれたらよかったのに。ごめんね。レジ打ちする前に言ってくれたら値引きできたけど、もう打っちゃった。途中から(値引きするの)は、よくわからないからできないのよ~」

勇気を出して、値引きのお願いを言ってみたものの、操作がよくわからずできないと言われ「あぁそうですか」とその時はすんなりと納得してしまったのです。

しかも、「あぁ、最初に勇気を出してお願いすればよかった」という後悔の気持ちでいっぱいでした。

今思えば、あの人は店主だったかもしれない。

「それを取り消して、最初から打てば値引きできますよ!」

とも伝えられたのですが、その時は、自分の“早く言えばよかった”という後悔と値引きをしてもらえなかったと落ち込んでしまい、冷静さもなく頭が回わりませんでした。

伝え方の技術として『結論から最初に言う』ことは知っていましたが、まったく自分の中には落とし込めていなかったと実感、これをきっかけに身につけることができました。

3. 数字で伝えるテクを学ぶ

さっそく、大阪のお店で実践。まず最初に値引きの話を!

「これ、10個買うのでちょっと値引きお願いできますか?」

特に、大阪なら値引きはしてもらえるだろうと期待していたのですが、ばっさりと断られました。

えっ? 何がまずかったのだろう??

お店で他の人のやりとりを見ていると、「●●円やったら、買うのになぁ」と大きな声でつぶやいていたのです。

そうか! 自分の希望は、具体的に数字で伝えることが重要なのだと気づかされました。

4. 目標を決め、実践して学ぶ

最近も相変わらず値段交渉を実践しており、これらのスキルを活かすことができました。

ある商品Aは、1個2500円で4個販売中。Bは1個1500円で3個売っています。

私の希望価格は、AとBを両方買うために、Aを1個1700円くらいで買えたらいいなと思っていました。

そこで、他の商品も見ながらちょっと雑談しつつ、

私「このAは、おいくらになりますか?」

店員「1個2500円です」

私「えぇ、そう書いてありますね…で、おいくらになります?」

店員「4個で8000円にしますよ」

私「それだったら、他店でも1個2000円であったから、ここで買わなくてもいいですよね。Bは1個1500円! AとBで7個。1500円なら…迷ってるところなんですよね~」

店員「現金払いだったら、Aを4個とBを3個のまとめ買いで、1個につき1500円でいいですよ! 税が10%別で…えーといくらに」

私「現金で払います。ちょっとお金おろしてきますので、その商品の確保をお願いします」

店員「税込で11550円です。確保して待っていますね」

もうちょっと会話らしく、「え~!」とか間とか雑談いれたりしていますが、大筋はこのやりとり。

1700円くらいには下げてもらえるかと想定していましたが、まさか全部1500円にしてくれるとは…、驚きました。伝えてみるものですね。

5. 学んだ伝え方は応用して身につける

もちろん、値段交渉に関しては、毎回うまくいくことではありませんが、希望があるならまず伝えてみましょう。

伝え方を失敗したところで値上がりすることはなく、だめでも定価のままなのですから。

このように失敗したり、うまくいったりした伝え方を覚えておいて、買い物だけではなく、他者へのお願いや報告、説明、動いてほしいことがある場合などにも応用させていけば良いのです。

あるいは、質問して、的確な答えが得られないとき、得られたときの伝え方の違いを比べてみるとか。

ほめたつもりなのに、ぜんぜん相手がほめられたと思ってもいなかったり、ほめてもいないのに相手がほめられたと解釈していたり。

伝え方でよい方向にいったら、それを別の現場でやってみる!

このようにして、うまくいかなかったとしても次にどうやって伝えたらうまくいくのだろうかと、試行錯誤していくことでだんだんと伝え方のスキルを身につけていきました。

日常生活や仕事での会話において、コミュニケーションスキルを実践すれば、そのやりとり自体が伝え方の練習にもなるのです。

ぜひ、うまくいったときの経験を学びにして、次もチャレンジを。そうやって基本的な伝える技術を磨いてください。

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沖本るり子(おきもと るりこ)

沖本るり子

株式会社CHEERFUL 代表。1分トークコンサルタント。「5分会議」®で、人と組織を育てる専門家。江崎グリコなどを経て、聞き手が「内容をつかみやすい」「行動に移しやすい」伝え方を研究。現在、企業向けコンサルタントや研修講師を務めている。「5分会議」®はRKB毎日放送「今日感テレビ」で紹介された。

著書に『期待以上に部下が育つ高速会議』(かんき出版)、『生産性アップ!短時間で成果が上がる「ミーティング」と「会議」』(明日香出版社)、『期待以上に人を動かす伝え方』(かんき出版)などがある。

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