Webブラウザーなどで静止画や動画の編集ができる「Adobe Express」。
撮影:小林優多郎
クリエイティブツール大手のアドビは6月27日、初心者向けコンテンツ制作アプリ「Adobe Express」の新機能を発���した。
外部の音楽素材を無料で追加可能に
Adobe Expressは、静止画や動画などのコンテンツを、PhotoshopやPremiere Proなどのプロ向けツールと比べて、簡単な操作で制作できるアプリだ。
今回追加された新機能は、動画向け機能になり、BGMやSE(効果音)などとの音素材を追加できるようになった。
この機能はAdobe Expressと外部サービスをつなぐ「アドオン」を通して提供される。今回、音素材を提供するのは国内音源素材サイトのAudiostock(オーディオストック)とTikTokの2社だ。
現在は、オーディオストックの中の100種類の音源を選べる。
出典:アドビ
オーディオストックのアドオンでは、100種類の音素材が利用できる。いずれも無料で、今後素材の数は増やしていく方針。
一方、TikTokが提供するのは「TikTok Symphony Assistant」という機能で、TikTokが用意している商用利用可能な100万種類以上の素材が収録されている「商用音楽ライブラリ」にアクセスするものだ。
縦型動画にぴったりな音源を選べるTikTok Symphony Assistant。
出典:アドビ
現時点では外観は英語のみの提供となるが、日本でも利用可能。ただし、TikTok Symphony Assistantを通して得た音源を使った動画データは、TikTokのプラットフォーム(TikTok Ads Managerを含む)にのみ投稿できる。
いずれのアドオンを利用するのに追加の費用は不要(Adobe Expressの無料ユーザーでも、有料ユーザーでも利用できる)。TikTok Symphony Assistantには投稿先の制限があるが、商用利用も可能。
現在はウェブ版のみの展開となるが、今後スマートフォンなどのアプリ版にも提供される予定だ。
入門クリエイティブアプリ競争は激化
アドビはAdobe Expressで連携できるツールを増やしている(2023年10月に撮影)。
撮影:小林優多郎
Adobe Expressは生成AI「Firefly」の機能が積極的に追加されるなど、アドビの中ではかなり注力しているツールになる。
PhotoshopやIllustrator、Premiere Proなどさまざまなプロ向けツールを開発するアドビだが、いずれのツールも使いこなすためにはある程度の時間を要する。
Expressはそんなプロ向けツールの手前の商品、特別な知識がなくても使える「入門ツール」として開発されているわけだ。
日本国内でもCM等を多数展開するCanva。
出典:Canva
ただし、こうした「入門ツール」は強力なライバルが存在する。代表格はオーストラリアの「Canva(キャンバ)」だ。
Canvaは2013年に開始し、日本語を含む100以上の言語に対応。月間アクティブユーザーは1億3000万以上という規模になっている。CNBCの報道によると、評価額は260億ドル(4兆1500億円)にのぼる。
クリエイティブ領域のシェアを確たるものにしたいアドビとしては、競合のCanvaを意識しながらツールの機能を磨き、連携先を増やしユーザーの支持を高めるという戦略をとることになる。