企業によっては、その商品やサービスの利用を簡単にやめられる場合があります。たとえば、コカ・コーラ社を嫌いになれば、コカ・コーラを飲むのをやめればいいだけの話です。

実際には、コカ・コーラ社はほかにもいろいろと製造しているので、製品ラインナップを調べて確認する必要はあるでしょう。それでも、コカ・コーラ社の利用をやめようと思えば、理論上は可能です。

ところが、Googleとなるとそうはいきません。Googleはいくつもの製品を世に送り出しており、その多くは私たちのデジタルライフにもはや欠かせないものになっています

私が今回取材したある専門家は、Googleのような企業の利用をやめることを、離婚にたとえています。

プリンストン大学で社会学を研究するJanet Vertesi教授は、「簡単ではありませんが、終わればすごく気が楽になります」と話してくれました。

離婚して幸せになった友だちを思い浮かべてください。がんばれば、あなたもそうなれます。Googleと別れるとは、そういうことなのです。

Vertesi教授は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のロボット宇宙船チームを研究し、人間とコンピューターの相互作用に関する研究も発表していますが、「Google問題」との関わりが長い人でもあります。

Googleが2012年3月、プライバシーポリシーを大幅に変更したとき、Vertesi教授はGoogleの利用を完全にやめることを決意しました。

彼女は「The Opt Out Project」というウェブサイトも運営しています。このサイトには、「ビッグテック」系サービスから、コミュニティー主導型サービスやDIYサービスへ乗り換えるためのアドバイスやチュートリアルが多数掲載されています。つまり、Vertesi教授自身が実際にそれをやり遂げたというわけです。

ということで私は、どのようにすれば「脱Google」ができるのか、Vertesi教授にアドバイスを求めることにしました。

米Lifehackerは過去にも、Googleと完全に手を切る方法と題した記事を掲載しています。5年ほど前には、Google各製品の代役にベストな選択肢のリストも発表しています。

そうした内容の大部分は、いまも有効です。とはいえ、Googleの利用を完全にやめるには、単に技術的な問題を処理すればいいだけではありません。これは、ある種の一大プロジェクトなのです

では、この大仕事に取り組むうえでのアドバイスを紹介していきましょう。

1. 全部をいっぺんに取り替えない

Vertesi教授がまずポイントとして挙げたのは、「すべての利用をいっぺんにやめようとしないこと」です。

人々が、はじめる前からくじけやすいのは、あまりにも大変すぎると思ってしまうからです。

象を一頭、いっぺんに丸ごと食べようとしても、それは無理な話。一度に一口ずつ食べるようにしなければなりません。

実際にはどうすればいいかというと、Googleの製品をどれか1つだけ選び、それに代わるサービスを使うようにするのです。

たとえば、Google検索の代わりとして最適なサービスを調べ、それを数週間試してみてもいいでしょう。あるいは、ブラウザを変えてみるのも一案です。

大事なのは、自分で自分を圧倒しないこと

全部を同時にやろうとしても、それは無理です。

Googleのサービスを1つ選んで、使用をやめ、習慣を変える。それから、また次のサービスを1つ選び、使用をやめ、習慣を変える…、というようにします。

どこから手をつければいいのかをVertesi教授に尋ねたところ、「いちばん簡単なのは、ChromeからFirefoxへ乗り換えることです」という答えが返ってきました。Firefoxを気に入っているのは、プライバシーとコミュニティーを重視しているところだそうです。

ということで、最初のステップにちょうどいいのは、Chromeから別のブラウザーへと乗り換えることであり、Firefoxならこの作業は簡単です。

ただし、「自分でいろんなブラウザーを調べて、試してみるべき」と、Vertesi教授は話しています。彼女自身、BraveやDuckDuckGoを使っており、場合によってはSafariを使うこともあるそうです。

Chromeは、人々が使用している多数のGoogle製品の1つ��すぎません。Googleを断つというのは、同社のアプリやオペレーション、サービスをすべてリストアップし、それを1つずつ、ほかのものと取り替えていくということなのです。

2. 別の会社にそっくりそのまま乗り換えない

Vertesi教授のアドバイスに従う場合、Googleの製品を一度に1つずつ、ほかのものに徐々に変えていくことになります。

「だったらいっそのこと、ほかの企業の製品一式と丸ごと取り替えてしまえばいいのではないか?」という誘惑に駆られている人もいるかもしれません。

けれどもVertesi教授は、「それでは問題の解決になりません」と指摘します。

1つずつ別のサービスへと乗り換えるアプローチには、メリットがいくつかあります。

まず、1つの企業があなたの全情報にアクセスできる状態を回避できること。そしてもう1つは、いろんな新しいツールを試し続けられることです。

「私にとって重要なのは、選択肢がたくさんあることです」とVertesi教授は述べます。

「Googleの代わりに何を使っているのですか?」と人から聞かれたときには、「いろいろ使っていますよ」と答えるようにしています。

今回の取材中も、Vertesi教授は実にさまざまなツールをすすめてくれました。

たとえば、メールならProtonとZoho、ファイル同期ならDropboxとResilo Sync、オンラインドキュメント編集ならCryptPadといった具合です。

さまざまなツールをなるべく多く組み合わせれば、データを別の場所に保存できるだけでなく、特定の作業に最適なツールを選ぶこともできます。

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