社員が主体的になるオフィス、「WISH Store」のすごい仕組み
横石:ウーブン・プラネットのオフィスを拝見して、非常に特徴的なのは、国籍や年齢など多様な人々がいること。スーツ姿の方はほとんど見かけませんでした。それに皆さんがフレンドリーで、通り過ぎると「こんにちは」と自然に挨拶してくださることも印象的です。
エグゼクティブのデスクはオフィスの入口付近にあって、誰でも気軽にアクセスしていましたし、温かみもそうなのですが、すごく人の気配があるオフィスです。
オフィスづくりにあたっては、長下さんが全体マネジメント、中井さんがファシリティマネジメント、浅井さんが「WISH Store(ウィッシュストア)」を担当されていると伺いました。「WISH Store」はオフィスのソフトウェアとして、とてもユニークな取り組みですよね。
浅井 慈さん(以下、浅井):ありがとうございます。「WISH Store/WISH Town」は、ここを「社員とともに成長し続けるオフィス」にするために取り入れたシステムです。
社員がオフィスに対する希望、つまり「WISH」を「WISH Store」という自社アプリに���録して、他の社員が共感した場合は「いいね」をクリックする形で応援します。
それぞれの「WISH」は建物として、エントランスのスクリーンに投影される「WISH Town」というバーチャルな街がつくられていくのです。
「WISH」の「いいね」が多くなると建物が大きくなり、「WISH Town」が育っていきます。そうして「いいね」を一定数集まった「WISH」に対して、私たちWorkplace Operationsのメンバーと、賛同した社員の有志が実現していく仕組みです。
中井:先ほど話に出たフィットネスジム以外にも、これまで多くの「WISH」を実現してきました。
たとえば、“Touch&Feel”という「WISH」がありますが、これは、当社のプロダクトであるAdvanced Drive(高度運転支援技術)を社員が実際に手に触れ体験できる機会がほしい、というものでした。
この「WISH」の実現により現在は、Advanced Driveを搭載したLexusのLSやMIRAIを、社員が実際に運転できるサービスが運用されています。
また、マッサージの利用枠を増やしてほしいなど、かなりの「WISH」を実現してきました。オフィスサウナがほしいという「WISH」もありましたが、それはちょっと難しいかもしれませんね(笑)。
浅井:「WISH Store」のメリットは、「いいね」の数や社員のコメントを通して、需要の大きさを客観的に測れることです。そうでないと、ただ“声が大きい人”の意見が通ってしまう場合がありますから。
横石:なるほど、このオフィスのオープンなコミュニケーションを象徴するような仕組みですね。「WISH」をただ叶えるのではなく、主体的にオフィスと関わってもらうための仕組みにしているところも巧みだと感じました。
中井:そうですね。ウーブン・プラネットはエンジニアとの距離も近いので、社員全員がお客様ではなく「仲間」として、イニシアチブとオーナーシップをもってオフィスづくりに関わってほしいという思いがありました。
横石:オフィスを使う側は、つい「誰かがやってくれるだろう」「用意してくれるよね」という前提に立ってしまう。それではオフィスはいつまでたっても成長していきませんよね。オーナーシップ・カルチャーのある組織であることが、このオフィスを通じてよくわかりました。
長下:コロナ禍の状況でもオフィスを良くするアイデアを集めることができたのは、「WISH Store」の仕組みのおかげ。働き方とオフィスの関係について考える上では、やはりコミュニケーションの向上に尽きるのではないかと考えています。「WISH Store」という試みは、オフィスだけでなく街づくりにも生かしていけるかもしれません。
横石:すべてのオフィスにあってもおかしくない仕組みです。
長下:よく、こういった形でボトムアップで意見を募ると、運営が大変では? と聞かれるのですが、そうでもないんですよ。「WISH」を出した社員は、オーナーシップをもって継続運営できるように協力してくれますし、何か要望があったときも「WISH Store」に出せば、すぐに皆の意見をもらうことができるので。オペレーション側としても、うまく回していくことができています。