すべて「人」を中心に考える。コミュニケーションを重視する理由

横石:オフィスをつくる上で大切にしたコンセプトについて教えてください。

長下:コンセプトは「AI PALETTE」、「AI」は愛と人工知能を表しています。自動運転技術もそうですが、最先端の技術といっても主となるのは「人」。その思いを大切に、多様な人々が共存するパレットのような場所として、このオフィスをつくりたいと考えました。

横石:コンセプトを具現化するための「3つの柱」──Inspiration(多彩なインスピレーションを創出する)、High Productivity(高い生産性を実現する)、Happy Work(幸せに活き活きと仕事する)──も人に関わるものですね。

長下:Happy Workは、日本の会社で掲げているところは少ないかもしれません。しかし、私たちは社員やその家族、そして関係するすべての人が幸せであるような会社を目指したい。

High Productivityも皆で成果を上げていくことを基本として、「人」を中心としたオフィスを構築することでサポートしたいと考えています。

スクラムにデスクレイアウトを組むことで個人で集中したい作業も、チームでのディスカッションもスピーディに。
スクラムにデスクレイアウトを組むことで個人で集中したい作業も、チームでのディスカッションもスピーディに。

その一例が、私たちが「スクラム」と呼ぶハニカム(ハチの巣)型のデスクレイアウトです。これはアジャイルなソフトウェア開発のための「スクラム開発」というスタイルから考案したものです。

スクラム開発では、5〜10人くらいの人数で開発をするのが最適だと言われています。ふだんは背中あわせで座ってプログラミングに集中し、何かあればすぐに真ん中のテーブルでディスカッションができる。オンオフの切り替えが容易で、チームでの作業が効率的にできるのが特徴です。

車のついたホワイトボード「山車ボード」をチームで活用
車のついたホワイトボード「山車ボード」をチームで活用
Photo: nagare satoshi

横石:オフィス見学で見せていただいた「山車(だし)ボード」のアイデアも秀逸でした。

長下:各チームに提供している、車のついたホワイトボードですね。あれはお祭りの「神輿」がデザインソースになっています。使い方は自由なのですが、メンバーの自己紹介が書いてあったり、おすすめの本を棚に飾ったり、チームビルディングに一役買っているようです。

オフィスの設備は他にもいろいろあって、福利厚生は充実しています。

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人工芝を敷いたプラザは靴を脱いでハンモックやクッションでのびのび過ごせるスペース。
人工芝を敷いたプラザは靴を脱いでハンモックやクッションでのびのび過ごせるスペース。
Photo: nagare satoshi
ダイニングスペースも広々。フードストリートでは各国の人の好みや食習慣にあうメニューを提供している。
ダイニングスペースも広々。フードストリートでは各国の人の好みや食習慣にあうメニューを提供している。
リラックスルームからは抜群の眺望が楽しめる。仮眠が取れる椅子や無料のマッサージコーナーも。
リラックスルームからは抜群の眺望が楽しめる。仮眠が取れる椅子や無料のマッサージコーナーも。
人工芝を敷いたプラザは靴を脱いでハンモックやクッションでのびのび過ごせるスペース。
人工芝を敷いたプラザは靴を脱いでハンモックやクッションでのびのび過ごせるスペース。
Photo: nagare satoshi
ダイニングスペースも広々。フードストリートでは各国の人の好みや食習慣にあうメニューを提供している。
ダイニングスペースも広々。フードストリートでは各国の人の好みや食習慣にあうメニューを提供している。
リラックスルームからは抜群の眺望が楽しめる。仮眠が取れる椅子や無料のマッサージコーナーも。
リラックスルームからは抜群の眺望が楽しめる。仮眠が取れる椅子や無料のマッサージコーナーも。

ソフトウェアエンジニアはコーヒーが好きなので、「ショーケース」と名付けたバーのようなスペースでおいしいコーヒーを提供したり。無料のマッサージ室を併設したリラックスルームや、自転車で通う社員が汗を流せるシャワールーム、個室でお祈りができる祈祷室、社員用のジムもあります。

(左)横石崇さん/ヒューマンファースト研究所アドバイザー(右)中井いずみさん/Workplace Operations Assistant Manager
(左)横石崇さん/ヒューマンファースト研究所アドバイザー(右)中井いずみさん/Workplace Operations Assistant Manager

中井いずみさん(以下、中井):ジムは筋トレにくわしい社員の仕切りでマシンを導入し、メンテナンスも社員が有志で行なっているのですが、かなり本格的なんですよ。

夕方になると、エンジニアがプロテインドリンクをシャカシャカ振りながらジムに吸い込まれていって、ひと汗流してシャワーを浴びて帰る…という風景をよく見かけます。

横石:ちなみに「3つの柱」に対して、パフォーマンスというか、KPIのような成果指標はどのように測定していらっしゃるのでしょうか?

長下:実は、High Productivtyという柱がありながら、KPIや効率を測定したりはしていないんです。

というのも、数値やデータを公開すると「あのチームは成果が出ていない」といったチーム同士の比較が始まって、かえってパフォーマンスが落ちてしまう懸念からなんですね。

それで、ルールや運用でガチガチにするのではなく、イノベーションを生み出すための文化づくりやチームワークのような、自分たちの振る舞いをよくしていくためのソフト面を重視しています。

長期的に見れば、その方が「より良い組織づくり、オフィスづくり」につながっていくのではないでしょうか。

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社員が主体的になるオフィス、「WISH Store」のすごい仕組み
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