キーウの小児病院にミサイル ロシア軍がウクライナ各地を攻撃、死者40人超

大きな被害を受けたウクライナ・キーウの小児病院

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ウクライナ各地で8日、ロシア軍のミサイル攻撃があり、少なくとも41人が死亡、166人がけがを負った。首都キーウでは小児病院がミサイルの直撃を受けた。

ウクライナ最大の小児科施設であるキーウのオーマトディト小児病院は、爆発で大きな被害を受け、2人が死亡した。

レシア・リシッツァ医師はBBCに対し、ミサイルが落ちた瞬間は「ものすごい光と恐ろしい音」で「まるで映画のようだった」と語った。

「病院の一部は破壊され、別の場所では火災が起きた。本当にひどい損傷を受けた。病院の60~70%が被害を受けたと思う」

現場の複数の画像には、幼い子供たちが病院の外で座り込む様子が写っている。子供たちの中には、点滴を受けたままの子もいる。

キーウのヴィタリ・クリチコ市長は、病院で死亡した2人は成人で、うち1人は医師だと明らかにした。また、救助隊はがれきの下に多くの人が閉じ込められている恐れがあると見ていると付け加えた。

ロシアはウクライナの防空ミサイルの破片が病院を直撃したとし、自分たちは病院を標的はしていないと主張している。一方でウクライナ側は、ロシアの巡航ミサイルの残骸を発見したとしている。

患者は点滴をつけたまま安全な場所に移された

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画像説明, 患者は点滴をつけたまま安全な場所に移された

オーマトディト小児病院はウクライナの主要病院で、がん治療と臓器移植を行っている。

「現在、患者を最寄りの病院に避難させているところだ(中略)。しかし多くの患者は挿管され、人工呼吸器を装着しているので、ほかの患者と接触することも、外に出ることもできない」と、リシッツァ医師は述べた。

病院関係者は、攻撃を受けた病棟では約20人の子供たちが治療を受けていたとウクライナのテレビ局に語った。

キーウのクリチコ市長は、ロシアが「ウクライナ人のジェノサイド(集団虐殺)」を企てていると非難した。

「ロシアのミサイルと(目標物に飛び込んで爆発する)『神風ドローン』が我々の平和な街にいるウクライナ市民をどのように殺害したのか、今まさに全世界が見ている」

市長はまた、キーウ市ドニプロフスキー地区にある別の産科病院にも破片が落下し、施設の一部が破壊され、7人が死亡したと付け加えた。

8日の空爆を受け、イギリスで開催中のテニスのウィンブルドン選手権では同日午後、��クライナのエリナ・スビトリナ選手が、黒いリボンを着けて出場した。

ウクライナ人テニスプレイヤーのエリナ・スビトリナ氏は8日午後、黒いリボンを身に着けてウィンブルドン選手権に出場した

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、キーウ、ドニプロ、クリヴィー・リフ、スロヴィヤンスク、クラマトルスクなどの複数都市で、「40発以上の異なる種類のミサイル」が建物やインフラを直撃したとソーシャルメディアに投稿した。

ゼレンスキー氏は「ロシアが我々の住民、我々の領土、我々の子供たちに再び与えた打撃」に対し、西側諸国の強い対応を求めた。

ドニプロの行政トップのセルギィ・リサク氏は、同市で1人が死亡し6人が負傷したと述べた。また、高層ビルと企業が被害を受けたと付け加えた。

東部ドネツク州ポクロフスクでは3人が死亡した。ロシア軍はここ数週間でドネツク州の多数の村を制圧している。

ロシアの今回の砲撃は、インドのナレンドラ・モディ首相が国賓として2日間の日程でロシア・モスクワを訪問中に行われた。モディ氏は9日にウラジーミル・プーチン大統領と会談する予定。

動画説明, 手術中に窓ガラス割れ……がん患者らも避難 キーウの小児病院にミサイル

欧州や国連が攻撃を非難

民間インフラへの攻撃を否定しているロシアは、小児病院の被害はウクライナの防空ミサイルがもたらしたものだと主張した。

しかし、ウクライナ保安庁は現場から回収されたロシアの「Kh-101」巡航ミサイルの破片だとする画像を複数公表している。

ウクライナのルステム・ウメロフ国防相は、防空ミサイルの早期強化を支援するよう同盟国に求めた。

「我々の防衛能力はまだ不十分だ。(中略)さらなる防衛システムが必要だ」

ウクライナの同盟国からは、小児病院への攻撃を非難する声が上がっている。

欧州連合(EU)のジョゼップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、ロシアが「無慈悲にもウクライナ市民を標的にした」と非難した。

イギリスのデイヴィッド・ミラー新外相は、「我々は、プーチン氏の違法な戦争について責任を負わせなければならない」と述べた。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は今回の攻撃を強く非難。国連のステファン・デュジャリック報道官は、小児病院やほかの医療施設に対する攻撃は「とりわけ衝撃的」だと述べた。

「民間人や民間のものへの攻撃は国際人道法で禁止されている。そのような攻撃は容認できず、ただちに終わらせなければならない」

国連のウクライナ人権監視団は、ロシアが空爆作戦を再開したことで、ここ数カ月で民間人の犠牲者が増えているとしている。直近の報告によると、5月の民間人の死者数は、ひと月の死者数としてはこの1年ほどの間で最も多かった。