レゾナック、半導体「後工程」で米に日米10社のコンソーシアム。GAFAMと連携で最先端パッケージ開発「いち早く」

レゾナック

レゾナック、エレクトロニクス事業本部の阿部秀則副本部長。Business Insider Japanの単独インタビューに応じた。

撮���:三ツ村崇志

大手化学メーカーのレゾナックが、アメリカ・シリコンバレーで半導体の「後工程」に関わる日米の半導体材料・装置トップクラスの企業10社と共にコンソーシアムを設立する。7月8日、発表した。

2025年の稼働開始を目指し、2024年からクリーンルームや装置導入などの準備を進めていく。

コンソーシアムに加盟するのは、アメリカからは半導体製造装置のKLAやキューリック&ソファ、銅電気メッキ材料のMLIなど。日本からは製造装置を製造するTOWAやアルバック、ほかにも東京応化工業やナミックス、メックといった材料メーカーが名を連ねる。

どの企業もいわゆる半導体製造の「後工程」と呼ばれる工程で重要な製造装置や素材などを取り扱う企業だ。

半導体の製造工程は、半導体チップのもとになる円盤状のシリコンウエハーを作る「前工程」と、チップを切り出して樹脂で囲ったり、端子を付けたり、全体を使える素子にするためにパッケージ化する「後工程」に分けられる。半導体産業で遅れを取っていると言われることの多い日本だが、後工程においてはレゾナックをはじめ世界トップの技術・シェアを持つ企業は多い

ビッグテックを筆頭に、生成AI向けの半導体需要が世界中で高まる中で、日本企業が強い後工程分野であえてアメリカにコンソーシアムを作る狙いはどこにあるのか。レゾナックの業務執行役兼エレクトロニクス事業本部の阿部秀則副本部長が、Business Insider Japanのインタビューに応じた。

巨大IT企業が自ら半導体設計をする業界トレンド

レゾナック

レゾナックは2023年1月に昭和電工と昭和電工マテリアルズが統合して誕生した。同社では多数の世界トップの半導体材料を取り扱っている。

撮影:三ツ村崇志

—— 今回、レゾナックが主導して半導体「後工程」に関わる日米企業のコンソーシアムを作るということですが、背景を教えて下さい。

レゾナック 阿部:従来の半導体は、例えばCPUやGPUなどが基盤上でそれぞれ一つのパッケージになっていました。その隣にメモリーなどの別のパッケージがあって、マザーボードを介して信号のやり取りをしていたわけです。ただ、生成AIのように大容量の計算を高速でやる必要が出てきたことで、それでは「間に合わない」と。後工程(パッケージ技術)の中で、できるだけ短い距離で(素子を)つなぐ新しい技術が必要になってきています。これが大きな理由です。

今のサプライチェーンでは、NVIDIAが生成AI用のデバイスを設計し、主にTSMCがその前工程・後工程を担い、そこで製造されたものをGAFAMのような企業が購入しています。そういった中で、GAFAMらから「自分たちで半導体を設計してもっと効率よく使いたい」というニーズが出てきています。そのために、今まで研究開発に力を入れてきた前工程だけではなく、後工程の設計思想も考えていくことが新たな潮流となっているんです。

新しいパッケージ構造を作ろうとしている人たちと密にコラボレーションすることで、必要な材料や装置のニーズをいち早く掴む。これが拠点を作る一番の理由です。

—— なぜ半導体産業では後工程が重要になってきているのでしょうか。今まで、半導体産業は前工程で「2nm」と呼ばれるような「半導体の微細化」を突き進めていたように思います。物理的に微細化の限界が近づいているのでしょうか。

阿部:前工程のロードマップではさらに細かいスケールの話も出ていますが、それ(微細化の限界)は1つあると思います。

従来は微細化でチップを小さくすることが、コストダウンと性能向上を実現していました。後工程はそれを「つなぐだけ」の役割だったんです。ただ、今は(超微細な最先端の)半導体を作るために必要な装置が、1台数百億円という世界観になってきています。当然完成品も高価になるので、経済合理性が弱くなってきています。性能向上と経済的バランスを取る方法を考える中で、後工程の性能向上の余地が見出されました。

また、もう一つの流れとして、一つの基盤に搭載できるロジック回路の数を増やしていく「チップレット」と呼ばれる方向性での進化も起こっており、パッケージング技術が求められています。

レゾナック阿部さん

撮影:上野翔碁

—— 今回、なぜわざわざアメリカにコンソーシアムを作る必要性があったのでしょうか。

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