モバイルバッテリーが膨張した時の回収先を把握してますか?

「あれ、このモバイルバッテリー膨張してない。。。?」

そう思ったのは出張明けの週末に家の掃除をしている時のことでした。筆者は仕事とプライベートの両方で家を空けることが多いため、一時期モバイルバッテリーを複数持ち歩いている時期がありました。さらにモバイルバッテリーを多用する中で、「もっと良いものがあるのではないか?」とAmazon等でセールがある度にとりあえず買うように。さながらミルクボーイの漫才のつかみの如く「こんなんなんぼあっても良いですからね」状態でした。

しかし、出張装備の軽量化を図ったり宿泊施設で夜間にモバイルバッテリーの充電を忘れても日中に案外問題がなかったり、等の理由でいつしかモバイルバッテリー自体を使うことがなくなって���ました。ということが今回のバッテリー膨張の発端でした。

バッテリー膨張を気にした理由

さて、このバッテリーの膨張を眼前にやや神経質とも思える感情だった筆者ですが理由は主に以下の2点にありました。

  • 偶然にも直前で夏場のバッテリー膨張が増えるというニュースを見たため
  • 当該のモバイルバッテリーがあまり聞いたことがない会社名のものだったため

なぜバッテリーが膨張するのか

バッテリー膨張のニュースはおおよそ以下の動画のような内容でした。正確にはSNSで消防士の方がモバイルバッテリーにわざと穴を開けるような衝撃を加えることで、モバイルバッテリーから火柱が発生するという注意喚起件パフォーマンスを行う動画を目にしたことが最初ですが、関連動画でニュースも目にしていました。

そもそもモバイルバッテリーの充放電はどのような過程を経て行われるのでしょうか?気になって調べてみたところ、東京都立産業技術研究センターの技術解説に代表的なコバルト酸リチウム正極/炭素負極で構成される電池の化学反応式が記載されていました。

$$\begin{eqnarray}
正極&:&{Li}_{1-x}Co{O}_2+x{Li}^++x{e}^-→LiCo{O}_2 \\
負極&:&{Li}_{x}(C)→C+x{Li}^++x{e}^- \\
全反応&:&{Li}_{1-x}Co{O}_2+{Li}_{x}(C)→LiCo{O}_2
\end{eqnarray}$$

式中に記載される様に正負極間をリチウムイオン\({Li}^+\)が往復しているので「リチウムイオン電池」というわけです。一方で反応式を見るだけでは膨張する要因となりそうなガスは発生していないようです。ただしこれはあくまで正負極の固体部分についてでこれらは電解液に浸され、この電解液は主にエチレンカーボネート(\(EC\))、ジメチルカーボネート(\(DMC\))、ジエチルカーボネート(\(DEC\))等の引火性有機溶媒に六フッ化リン酸リチウム(\(LiPF_6\))を溶解したものが使用されています。(参考:リチウム二次電池の電解液開発動向)この電解液が過充電または過放電により劣化した電極の銅箔等と反応することで膨張の原因となるガスが発生する様です。

例としてガスクロマトグラフィー\(^{*1}\)(GC)やガスクロマトグラフィー質量分析法\(^{*2}\)(GC/MS)により150サイクルの充放電後に膨れが発生したラミネート型リチウムイオン電池のガスを測定した結果が以下になります。ガスの組成比を見るに水素、二酸化炭素、エタン等の可燃性ガスが主なことから動画内で発火が発生しているのも頷けます。

\(^{*1}\)クロマトグラフ\(^{*3}\)法の一種に分類され、固定相(固体または液体)に対する機体の吸着性あるいは分配係数の差異等を利用し、成分を分離する手法
\(^{*2}\)GCで分離した成分の検出に質量分析計を用いることで、質量情報から成分の定性および定量を行う
\(^{*3}\)化学的・物理的な性質や相互作用を利用して分離させる装置
(参考:株式会社日東分析センター)

知らないメーカーから買ったモバイルバッテリー

と、モバイルバッテリーが膨張する理由や発火につながる理由は分かったとしてもう一つの問題は「よく知らないメーカーから購入した」ことです。そしてこの問題は結果的に神経質になってよかったことにつながります。

まず初めにこのモバイルバッテリーを処分しようと考えるわけですが、ネットで検索すると「膨張したモバイルバッテリーは回収できません」という文言がヒットしてしまいました。もう少し詳細を話すと、大手家電量販店や市町村では「モバイルバッテリーの回収は行っていますが、分解・破損・膨張等がみられるモバイルバッテリーの回収はお断り致します」とのことです。感想としては「そりゃあそうだよね、万が一膨張したバッテリーが破ければ引火、最悪の場合爆発する可能性があるのだから。。。」でした。

とはいえ、発火の恐れがあるものを家に置いておくわけにもいかずAmazonのカスタマーサポートに連絡したところ「返品期限をすぎているので返品できません」とチャットが返ってきました。(返金ではなく怖いから返送したいだけなのだけど)さらに五月雨式にチャットがAmazonのチャット担当の人から届き、どうしようかと返答内容を2分ほど考えていたところ「一定期間返答がなかったため社内規定によりチャットを終了します」とチャットを強制終了されました。(一定期間の定義が短い。。。)

結果的には回収してもらえる場所を見つけて回収してもらえたのでことなきを得たのですが、これだけ普及しているものに対しての回収制度があまり整っていないのは驚きでした。

膨張したバッテリーを回収してもらえる場所

今回はたまたま回収してもらえる場所が見つかったのでよかったですが、今後似た様なことが発生した際にはどうしたら良いのだろうか、がポイントです。結論を申し上げますとJBRCの公式HPから���収協力店を検索してください、です。実は初めにネットで検索した際に気づいたのですが、家電量販店等が回収の協力をしている大元がこのJBRCだったわけです。ただし、協力店であればどこでもいいわけでもなさそうで、例えば筆者が最初に訪れた家電量販店のHPでは(分解・破損・膨張をしていないものに限り)合計8店舗ほど回収をしていますと書かれていましたが、JBRCのHPから検索した回収対象外品の処分に協力している店舗としては同家電量販店は1店舗のみでした。(確実に回収してもらえるかは不明なので事前に電話で確認すべきだと思います。)この経験から今後同じ理由でモバイルバッテリーを処分する場合は一度JBRCのHPで検索してヒットした店舗に行こうと思います。

ただしJBRCのHPにも記載のとおり、「ダイソン株式会社のコードレス掃除機用 非純正バッテリーの一部にて火災事故が発生しています。当該バッテリーは、JBRCでは回収対象外のため、協力店にはお持ち込みできません。」というように回収できないものもある様です。(同製品については経産省のHPを見たところ販売元が倒産している様です。。。)

おわりに

ということで今回はリチウムイオン電池の処分に困った経験と、そこから得られた対処方法についてレポートしました。第一によく知らないメーカーからバッテリーの類は買わないこと(経産省の報告にもある様にサードパーティー製のバッテリーが発火する恐れがあっても倒産して回収してもらえない事例があること)を心がけ、第二に万一を考えて回収してもらえる場所や販売元の対応状況を確認しておく様にすることとしました。皆さんもついついバッテリーを買いすぎてしまうことにはご注意ください。

「あれ、このモバイルバッテリー膨張してない。。。?」 そう思…

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