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作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】

VOGUE JAPANの読者からも多くの共感を集める個性あふれる作家3名が、グローバルトラベルブランドのエクスペディアを利用したスマートな旅で、アジアの都市を訪れるシリーズ。第2弾では小説家の西加奈子が、多様な民族・宗教・文化が強烈な輪郭を保ちつつ共生する街、マレーシア・ペナンを訪れる。
ホテルのプールで考えること
作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】
400年以上にわたり、ポルトガル、オランダ、イギリス、日本、そして再びイギリスに占領された歴史を持つマレーシアでは、西洋の建築や文化の影響が随所に見られる。滞在した「イースタン & オリエンタル ホテル」はシンガポールのラッフルズ ホテルの創業者として知られるサーキーズ兄弟が1885年に開業した、ペナンで最も由緒あるホテル。コロニアル調の外観、ヘリテージウィング(本館)の趣あふれる内装やプール、そのどれもがアイコニックな輝きを放つ。 Photos: Courtesy of Eastern & Oriental Penang
旅に出ると、私は必ず、海かプール、とにかく水に入る。特に暑い国に行くときは、部屋よりも先にプールを基準にホテルを選ぶ。 ペナンへの旅が決まったとき、私が真っ先に求めたのもプールのあるホテルだった。宿泊した「イースタン & オリエンタル ホテル」の、あまりに美しい部屋から出たくなかったけれど、窓を開ければ目の前に、海に面したプールがある。私は結局早々に水着になって、部屋を飛び出した。

午後のプールは誰もいなかった。水は強い日差しに温められていて、海に小さな船が一艘浮いているだけだった。いつものようにひとしきり泳いで休憩し、デッキチェアで本を読んで、また泳ぐ、ということを繰り返した。時には泳がず、ただただ水に潜っているだけのこともある。長く。そうしていると、自分と世界との境目が、少しずつ淡くなってゆく。
クレヨンと水彩が教えてくれる、境目の在り方
作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】
大航海時代、海上交通の要衝であったペナンのジョージタウンの旧市街には、18世紀から19世紀ごろの建造物が現存し、ユネスコ世界文化遺産にも登録されている。多様な民族が暮らし、異なる宗教や文化が混在する街の風景には、1800年代初頭に創建されたモスクやヒンドゥー教の寺院の側に中華系の店が並び、古い外壁にはグラフィティ・アートが躍る。
私は、クレヨンで絵を描く。人物を描くときも、植物を描くときも、黒いクレヨンでくっきり縁取りをするのが好きで、そうしているうち、自分は何かと何かを隔てるのが好きなのだろうか、と考え込むようになる。線を主張し、その輪郭を強くすることは、他者を受け入れない、という深層心理につながっているのではないか? その証拠に、私は、水彩で絵を描くことが苦手だ。水彩の絵の具があまりにやすやすと他の色と溶け合うのを見ると、少し不安になるのだ。

水に入って目を閉じていると、自分と世界との境目が淡くなる。自分の身体が水に溶けてゆくように感じる。けれど目を開けて見ると、透明な水に浸かっている自分の身体が、地上にいるときよりくっきりと浮かび上がっている。私はその、両方の感覚を行き来する。私がなくなる感覚と、紛れもなく私がそこにいる感覚と。他者と交わり合いたい。他者を受け入れたい。でも、私であることを手放すのは怖い。それがまさに、水の中にいる私だ。
何かと何かが混ざり合わない街の景色
作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】
現地では娘惹(Nyonya)と称されるプラナカンは、15世紀後半から数世紀にわたりマレーシアやシンガポールに移住した華人とマレー人との間に生まれた子孫の総称だ。植民地時代に西洋との交易を通じて巨万の富を得た家系も多く、西洋と東洋がミックスされた独自の文化を形成した。ペナン プラナカン マンションはそんなプラナカン建築を象徴する豪邸を改装し、同文化を今に伝える博物館。一族が暮らし、鮮やかなグリーンやピンクで彩られた住居棟(博物館)の隣には、一族の先祖をまつる、贅を尽くした開放的な霊廟が併設される。
ペナンでは、何かと何かが混ざり合ってはいなかった。水彩画のように、たやすく他者と溶け合っている景色は、そこにはなかった。

ペナン プラナカン マンションの壁は美しいエメラルドグリーンで、それを背景に鮮やかなピンク色の花が飾られている。真紅のランタンの隣には西洋の豪奢なシャンデリアが輝き、天蓋付きのベッドには赤とショッキングピンクの精巧な刺繍布がかけられている。海のような深い青に塗られたザ ブルーマンションは、美しい西洋式の柱に支えられながらも、完璧に東洋の風水に則って造られている。
それぞれの「神様の家」
作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】
クー・コンシ(邱公司)は、中国の福建省から渡来した邱一族が、先祖をまつるために建立した宗廟。1902年に火災により消失した施設を、一族が結集して1906年に再建した。精緻な石や木の彫刻が随所に施され、荘厳なたたずまいを放つ。スリ・マハ・マリアマン寺院は1833年に建てられたペナン最古のヒンドゥー教寺院。カピタン・クリン・モスクは、1910年に現在の姿に改築されたが1801年創建と歴史は古い。ペナンを象徴するこれらの宗教施設は、それぞれが強烈な文化的美意識や個性を際立たせて、威風堂々とこの街に存在している。
リトル・インディアにあるスリ・マハ・マリアマン寺院のカラフルなインドの神々には、美しいマリーゴールドの花輪がかけられていて、ヤップコンシーでは中国の神々と、彼らのファミリーの先祖が、息を飲むほど精巧な中国の彫刻で縁取られている。そしてそれらの数百メートル先には、メッカに向かって正しく建てられたカピタン・クリン・モスクの白く美しいドームが空に向かって伸びている。それぞれの「神様の家」は、個を殺してなどいない。最大限に個性を主張しながら、小さなエリア内で共存している。
Khoo Kongsi(クー・コンシ/邱公司)
18, Cannon Square, 10200 Penang, Malaysia

Sri Maha Mariamman Temple(スリ・マハ・マリアマン寺院)
Lebuh Queen, George Town, 10200 Pulau Penang, Malaysia

Kapitan Keling Mosque(カピタン・クリン・モスク)
14, Jln Buckingham, George Town, 10200 Pulau Penang, Malaysia
「みんな同じ」じゃない世界
作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】
映画『クレイジー・リッチ!』(2018)のロケ地のひとつとしても知られる“ブルーマンション”ことチョン ファッ ツィー ザ ブルー マンション。「東洋のロックフェラー」の異名を持つ中国出身の実業家チョン・ファッ・ツィーが、寵愛した第七夫人のために建てた邸宅だ。中国の伝統的な中庭住宅の様式を生かしつつも、西洋からの影響や資材をふんだんに取り入れ、贅を尽くして建てられた。名前の通り、ブルーを基調とした美しい邸宅は、現在はホテルとしても営業し、邸宅内のレストランIndigoはペナンのベストレストランにも選ばれた名店として知られる。チョン・ファッツィーが起こしたワイナリーで造られるワインとのペアリングメニューも楽しめる。 Photos: Courtesy of Cheong Fatt Tze - The Blue Mansion
ヒジャブをかぶった女性の一団とサリーを着た女性たちがすれ違う。中国語が飛び交うレストランで、英語を話すウェイターが席の間を速やかに移動し、外に出るとマレー語で誰かを呼ぶ声が聞こえる。街で見かける表記にはヒンドゥー語とマレー語と中国語と英語が混在する。

「みんな同じ」などというまやかしの言葉は、この街にはない。みんな違う。みんな圧倒的に違う自分のままで、そこにいる。
強い輪郭を保ったまま、他者と出会う
作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】
「メルティング・ポット(NY)」ではなく「モザイク・シティ(トロント)」に近い印象を西が受けたペナンでは、街にも建物の細部にも、個々の文化の矜持がにじむ。(写真上から)ペナン プラナカン マンションの豪華な装飾が施された吹き抜けのリビング。ブルーマンションにもペナン プラナカン マンションにも部屋ごとに異なるタイルが施されている。クー・コンシもスリ・マハ・マリアマン寺院も細部に至るまで緻密な彫刻や装飾が施され、来訪者を圧倒する。街を構成する建物の随所に、東西貿易の要であるマラッカ海峡に位置し、古くから貿易の拠点として栄えたペナンの歴史が刻まれている。
何かを受け入れるとき、何かと混ざり合うとき、自分を完全になくす必要などないのだと、この街にいると思うことができる。私は、まるっきり私のままで、新しい景色に、新しい経験に足を踏み入れることができるのだと。

私はきっとまた旅をするだろう。ペナンで見た景色は、私の輪郭を、さらに強くしてくれた。強い輪郭のまま私は他者と出会い、見知らぬ景色と出会うのだ。
エクスペディアアプリを旅のお供に
作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】
松本千登世が美しさの本質を探るためにインドネシア・バリに旅した第一弾に続き、作家・西加奈子が“共生社会”のあり方を知りたいと訪れたマレーシア・ペナンへの旅を実現すべく活用したのも、エクスペディアの旅行アプリだ。今回の目的の一つであった「心地よいプールがあるホテル」を探す際には、エクスペディアアプリ上のスマートショッピング(宿泊施設比較ツール)が大活躍。ペナンにあるホテルを最大5軒まで比較して、好みにあったホテルを選ぶことができる。世界各地500社を超える提携航空会社のオプションから自由に選べるフライトは、忙しない日々から捻出した日程を最大限に活かすべく、シンガポール空港のビジネスクラスでの機内2泊・現地2泊という旅程をセレクト。豊富な選択肢から最適なフライトを選ぶことができるため、旅を最大限楽しむことが可能に。

また、航空券の価格変動をプッシュ通知で知らせてくれるエクスペディアの「プライストラッカー」も、旅の計画に欠かせない機能だ。以前見た価格が変動すると通知で知らせてくれるので、頻繁に航空券の価格をチェックする必要がない。予約までの時間を効率化したい人におすすめだ。

フライトとホテルだけでなく、今回訪れたチョン ファッ ツィー ザ ブルー マンションやカピタン・クリン・モスクでのツアーやアクティビティもエクスペディアを通じて予約可能。今年の夏旅はエクスペディアをフル活用して、見たことのない景色に出合うための旅に出てみては?
作家・西加奈子を刺激する“共生社会”のあり方【エクスペディアで行く旅 Vol.2/マレーシア・ペナン編】
西加奈子
作家。イラン・テヘラン生まれ。エジプト・カイロと大阪で育つ。2004年『あおい』でデビュー。直木賞受賞作『サラバ!』(2014)や、カナダでがんに罹患した体験を記し、29万部を超えるベストセラーとなった『くもをさがす』(2023)、短編集『わたしに会いたい』(2023)ほか、自身が絵も手掛けた絵本など、著書多数。

Photos: Teh Weng Jen at TWJPTO Coordinators: Eva Yee, Misaki Yamashita Editor: Yaka Matsumoto Digital Producer: Mio Takahashi

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