ファッションウィークは雨天でも決行する──9月11日(現地時間)、それをはっきりと証明して見せたのが、スカイライン・ドライブイン・ニューヨークで「See Now, Buy Now(今見て、すぐ買う)」形式の2022-23年秋冬コレクションを発表したトミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)だ。霧に覆われたショー会場では、ビニールポンチョに身を包んだ観客たちの前でモデルたちが力強くランウェイを闊歩した。一種の演出かとさえ思わせたこの天候は、今シーズンのヒルフィガーのムードを投影したハードなプレッピースタイルと見事にマッチ。クラスの“優等生”から“問題児”への大胆なシフトを見せた。
インパクト大の超ビッグシルエット。
ショーはセンセーショナルなオーバーサイズのアイテムで幕開け。ひざ下まであるロング丈のラガーシャツ、ビッグサイズのバーシティジャケットやバギーチノパンツ、何重にも巻けるほどのスカーフなど、圧倒的なボリューム感がコレクションを決定づけた。
モノグラムのジャンプスーツを纏ったプラスサイズモデルのプレシャス・リーはムチを華麗に操り、クラウンに高さを出したテンガロンハット、ハーネスを身につけたカウボーイ風のルックが続いて登場。タフな反骨心に満ちたムードを際立たせた。
リチャード・クインとの最新コラボアイテムも。
80を超えるルックの中には、最近発表されたリチャード クイン(RICHARD QUINN)とのコラボレーションアイテムも。挑発的なスパイクがあしらわれたレザージャケットやブーツ、プレイフルなプリントで彩られたボリューミーなパファーコートなど、圧巻のステートメントピースが次々と展開された。
多様性を極めたキャスティング。
この壮大な演出が目立ったショーで特記すべきは、これまで以上に多様なキャスティングだ。ケイト・モスの娘であるライラ・モス、アクティビストのクアンナ・チェイシングホース、ウィニー・ハーロウ、パロマ・エルセッサー、ジュリア・フォックスなど、年齢、人種、ジェンダー、体型といった垣根を超えた個性溢れるモデルたちが登場し、エネルギッシュなニューヨークの有り様を映し出した。Netflixのドキュメンタリー映画『ホワイト・ホット:アバクロンビー&フィッチの盛衰』(2022)でも取り上げられたように、かつてプレッピーが高貴で排他的なファッションとされてきたなら、ヒルフィガーが打ち出したのは今日にふさわしいインクルーシブなスタイルだ。
フロントローを飾った多彩なゲストたちにも注目を。ショーン・メンデス、ケイト・モス、コートニー・カーダシアン、トラヴィス・バーカー、クリス・ジェンナー、コーリー・ギャンブル、さらにはEGOT受賞者(エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞のアメリカ4大エンターテイメント賞制覇)のジョン・レジェンドの姿も。
ブランドの真骨頂はフィナーレに。
ショーのフィナーレでは、トラヴィス・バーカーが観客席からステージへ。コートを脱ぎ捨て、ニューヨークの街並みをバックにドラムの生演奏を披露。ドラムを叩くたびに勢いよく水しぶきが上がり、その臨場感溢れる会場の様子はすべてライブ配信された。所々に取り入れられたメタバースファッションも今すぐ購入できるかもしれないといった期待を届け、これが新時代におけるトミー ヒルフィガーだと言わんばかりの堂々たるパフォーマンスとなった。
Text: André-Naquian Wheeler Adaptation: Motoko Fujita
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