ワンカラー&ロングスクエアが今の気分
昨年からのビッグウェーブ、「Y2K」を経てネイルトレンドに変化の兆しが。マイアミを拠点に活動するEtsuko Shimataniさんは、今のムードをこう読み解く。「アメリカにいて肌で感じるのは、“テイラー・スウィフトブーム”です。角に丸みをもたせたスクエアオフのシェイプに、シアーなミルキーピンクやホワイトなどの、淡めな色味によるシンプルなワンカラー。ギターを弾く彼女らしく、短めに仕上げるのもポイントですね。そんな彼女のファンである〝スウィフティーズ〞やほかのアーティストたちが真似をして、シンプルなデザインが人気になっています」。日本における傾向について、東京のネイルサロンオーナーMANAMIさんに聞いてみると「以前よりもシンプルなデザインが増えましたね。ピンクベージュやベージュといった、少々コンサバに転びやすい色味を、ファッション感度の高いお客様に提案することがあります。ベーシックなデザインに、質感や輝きなど、ちょっとした変化をつけるイメージ。先端が極細のフレンチにしたり、一本だけミラーネイルにするなど質感を変化させることが多いですね」。実際、SNS上でもやや懐かしさのあるフレンチネイルや、キラキラのストーン&クリスタルが復活の兆しを見せている。ただし、フレンチのディテールやキラキラの配置などを、微妙に今っぽく変化させるのがポイント。ベーシックを新たな解釈で楽しむのが旬のようだ。
目線をランウェイに向けてみると、彼女たちのリアルな分析とリンクする。「コレクションでは90年代風のミニマルな提案が見られ、ネイルはミラー系やシルバーヌーディな色味など、かなりシンプル。その分、シェイプにこだわっている印象がありました。少し長めだったり、スクエアにすることでモード感を出していますね」(MANAMIさん)。数々のショーやキャンペーンを手掛けるShimataniさんもこう語る。「デザイナーのこだわりの強さによって変わりますが、基本的にはシンプルだけど、ファッション要素の高いベーシックカラーの単色使いが多い印象です。むしろ、カラーを使わず、素爪をバッフィングしてナチュラルに輝かせるだけといった、究極にミニマルなネイルを求められることも。形のトレンドは、変化をつける場合はロングスクエアが人気です」
季節柄、ペディキュアとのコーディネートも気になるところ。「アメリカでは、ハンドとフットは同色をチョイスして、シンプルなワンカラーで気分に合わせて頻繁にチェンジする人が多いですね。そもそもネイル文化が根付いているので、子どものときからサロンに通う方もいるなど、日本よりもハードルが低く、凝ったデザインを長く楽しむというよりは、単色でしょっちゅう変えて手軽に楽しむ傾向が」(Shimataniさん)。「フットについては、ハンドと無理にリンクさせる必要はなく、自分自身が楽しめる色を、と常々提案しています。トレンドはハンドの傾向と似ていて、シンプルで全体の統一感があるデザインが多いですね。指ごとに異なる柄にするというよりは、ある程度揃えたほうが今っぽさが出ます。特にミラーやストーンのポイント使いはオーダーが多数。ストーンの場合は、爪の端ギリギリに置くなど、配置でもモード感を出すひと工夫をしています(MANAMIさん)。デコラティブなネイルをひととおり体験した今、この春夏はミニマルなデザインが気分。ファッションにしっくりと〝なじむ〞カラーで、モダンなルックを楽しんでみたい。
話を聞いたのは……
ETSUKO SHIMATANI
嶋谷悦子。ネイルアーティスト。2010年に渡米。NYでさまざまな雑誌や広告、ファッションウィークやアワードに参加し、セレブリティのネイルも担当。2022年からは、マイアミに拠点を移して活動中。インスタグラムは「@nailsbyetsuko」。
MANAMI
マナミ。東京・恵比寿のサロン「Latte.」「Lowaly」のオーナー兼ネイリスト。アート心あふれる作風で、モード誌や映画、ドラマ、CM等で活躍。画家の一面もあり、多岐にわたって活躍する姿はインスタグラムでチェック。「@_man_ami_」。
Text: Kiriko Sano Editor: Risa Yamaguchi
※『VOGUE JAPAN』2024年5月号「日常とリンクする、シアーなネイル」転載記事。
![article image](https://cdn.statically.io/img/media.vogue.co.jp/photos/65eabd6a255d2cc049a15779/1:1/w_775%2Cc_limit/sakura_nail.jpg)