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Sponsored by 住宅金融支援機構

年々暑さを増しているような日本の夏。まだ残暑が厳しい季節ですが、今年の夏は本当に暑かったですよね!

そして、これから秋となり、冬となると今度は「寒さ」が新たなストレスとなるわけですが、家の中での快適なくらしを追求するROOMIEとして、この問題は見過ごせません!

そこで今回は、「住環境と健康」の専門家である慶應義塾大学の伊香賀俊治教授にお話を伺いました。話を聞いていくと、家の断熱性は単に快・不快の問題だけにとどまらず、熱中症対策や睡眠など「健康」にも深くかかわっていることがわかったのです。

おうちの断熱性と健康には深いかかわりがある……?

暑くて眠れない…そのとき部屋は「オーブン」状態

ここ数年、日本の夏はどんどん暑くなっています。伊香賀先生によると、2023年に熱中症で救急搬送された人の数は、全国で6万3,000人以上。しかも、室内での熱中症が全体の4割に及んでいるそうです。

そもそも炎天下でもない家の中で、なぜ熱中症が発生するのでしょうか。要因のひとつは「家の断熱性」だと伊香賀先生は指摘します。

古い住宅は屋根や外壁に断熱材が設置されていないことが多く、室温と天井表面の温度が高くなりやすいので、熱中症が重症化しやすくなります。

特に古いコンクリート造のマンションは、構造体に熱を溜め込みやすいんです。昼間の熱が一番室内に入ってくるのは、実は夜中。それこそ、オーブンの中で寝ているようなものなんですよ。(伊香賀先生)

断熱性の低い壁だと熱をため込んでしまう。

「エアコンをつけたり、水分・塩分摂取に気をつけたりするだけでは、熱中症はなかなか減らせない」と伊香賀先生。事実、これだけ熱中症の注意喚起がされていても熱中症患者の数は減っていないことがそれを物語っています。

家の断熱性能を高めれば、外の熱気が家に入りにくくなり、冷房の効率も上がります。熱中症を根本的に防ぐためには、家の断熱改修がとても大切なのです。

就寝時の冷房、翌日の生産性がもっとも高まった設定は?

断熱性能が低い家では、睡眠の質も下がります。夜間の最低気温が25℃以上になる熱帯夜の日数は、60年前が5日間だったのに対して、現在は40日間を超えているとのこと。

伊香賀先生によると、睡眠の質は翌日の知的生産性にも影響するということで、どうすれば快適に眠れるのか伺ってみました。

先生が例として出してくれたのは、あるフィールド調査の結果です。寝室の冷房方式ごとの睡眠効率と、翌日の知的生産性(この実験では英文タイピングの作業効率)の関係を調べたところ、こんな結果が出た(※)といいます。

・「26℃連続」冷房……冷えすぎと不快な気流で睡眠が妨げられ、6,800円のムダ
・「28℃冷房で3時間後停止」……5,800円のムダ
・「26℃冷房で3時間後停止」……1,800円の節約
・「28℃連続」冷房……5,400円の節約
・「放射冷房」(内部に冷水を流してパネル表面を冷やす冷房方式)……7,400円の節約
※金額については「労働経済白書」の現金給与額で社員の毎月の人件費に換算
※『月刊健康づくり』2020年8月号 連載「健康に住み続けられる住まい入門」(慶應義塾大学伊香賀俊治)より

なるほど、一般的な冷房の場合、睡眠の質と翌日の知的生産性が高まるのは「28℃でつけっぱなし」。思い切って放射式の冷暖房システムを導入すると、さらに効率が良くなるということですね。

とはいえ、これは断熱・日射遮蔽性能に優れた実験住宅で行った実験とのこと。「大切なのは、断熱性に優れ、適切に冷暖房が効く住宅に住めるよう気を配ることです」と先生は指摘します。

WHOも勧告する「寒い家」の健康リスク

断熱性が高い家のメリットは、夏だけではありません。

2018年11月には、WHO(世界保健機関)が「住まいと健康のガイドライン」を発表。新築・改修時の断熱工事や、夏季の室内の熱中症対策などの推進を各国に勧告しました。

このガイドラインでWHOが特に強調したのが、住まいの冬季の室温を18℃以上にすること。小児・高齢者がいる場合はもっと暖かくするのがベターとされ、換気の重要性も指摘されています。

家が寒いと、血圧の上昇や、肺の抵抗力の弱体化を引き起こす可能性が高まります。こう言うと「若いうちは大丈夫かな」と思われるかもしれませんが、そうとは限りません。特にお子さんや女性は注意が必要です。(伊香賀先生)

子どもや女性は男性に比べると身体が小さく、体重あたりの表面積が大きいので、室内の気温の悪影響を受けやすいのだそう。暖かい家は子どもの病欠が少なく、女性のPMS(月経前症候群)が軽減されるというデータもあるといいます。

さらに在宅ワーク時は、「寒い家」が生産性の敵になります。伊香賀先生の調査では、断熱性の高い住まいで足の血行や冷えが改善されると、単純作業はもちろん創造性が求められる作業の成績も上がったそうです。

長い時間を過ごす自宅の環境を整えるためには、気温差や結露による湿気を防ぐ断熱性能がとても大切です。断熱性の高い住まいが家族の健康を守り、仕事の能率も高めるということを、もっと多くの方に知っていただきたいですね。(伊香賀先生)

もちろん、断熱性の高い家は住み心地がよく快適で、ぐっすり眠れて健康維持に役立つだけでなく、昨今の物価高で悩みの種にもなっている「光熱費」も低く抑えてくれます

しかし、実はそれだけにとどまりません。そんな断熱性の高い家(省エネ住宅)を購入するときにある住宅ローンを利用すれば、さらなるメリットが得られるのです。

断熱性能に優れた「省エネ住宅」を建てるとメリットがたくさん!

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、国は「省エネ住宅」の条件を定めました。

省エネ住宅には屋根や外壁、窓といった住宅の外皮基準と、暖房機器や照明、給湯器などのエネルギーを使用する設備の基準が定められている(住宅金融支援機構の【フラット35】サイトをもとに作成)。

新築住宅の省エネに関しては、2025年4月(予定)から、すべての住宅・非住宅に「省エネ基準(※1)」への適合が義務付けられることになっています。つまり住宅ローンの控除を受けるためには、国の基準を満たした「省エネ住宅」にしなくてはなりません

国の方針ということで、「省エネ住宅」を取得しようとする人にはさまざまな補助が用意されています。その一つが、最長35年の全期間固定金利の住宅ローン【フラット35】を利用するときに、よりメリットの大きい2つのプランを利用できることです。

ひとつめのプランは【フラット35】S。【フラット35】を利用する方が省エネルギー性、耐震性などを備えた質の高い住宅を取得する場合や長期優良住宅(※2)を取得する場合などに、【フラット35】の借入金利を一定期間引き下げる制度です。

もうひとつのプランは【フラット35】S(ZEH)。住宅が「ZEH(net Zero Energy House:ネット・ゼロ・エネルギーハウス)」の水準に達していると、さらなる金利の引下げや税制の特別措置、国からの補助金を利用することができます。

住宅金融支援機構の【フラット35】サイトをもとに作成

新築住宅でさまざまなメリットがある【フラット35】を利用するためには、 「省エネ基準」への適合が必須条件。求められる断熱等性能等級は、以前の「等級2相当以上」から「等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上」へと上がっています。

また、【フラット35】S(ZEH)の基準となる「ZEH水準の省エネ住宅」として申請できるのは、「等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上」の住宅です。

詳しくは【フラット35】の「省エネルギ-基準ポータルサイト」などを参考にご確認ください。

※1「省エネ基準」……国が建築物省エネ基準法によって定めた基準のこと。屋根や外壁、窓といった住宅の外皮基準と、暖房機器や照明、給湯器などのエネルギーを使用する設備の基準が定められている。
※2「長期優良住宅」とは、長く安心・快適に暮らせる優良な住宅として国が定めた基準を満たし認定を受けた住宅のこと。

【フラット35】を利用した省エネ住宅づくりは「理想のライフスタイル」の第一歩!

今は若く健康で、暑さや寒さに強かったとしても、家は長い間住み続けるもの。断熱工事にコストをかけたとしても、高騰する光熱費を節約でき、医療費も削減できるとしたら、費用対効果の高い投資と言えるはず!

【フラット35】を利用した「省エネ住宅」づくりは、理想のライフスタイルを叶える第一歩になってくれそうです。

伊香賀俊治さん
1959年東京生まれ。1981年早稲田大学理工学部建築学科卒業、同大学院修了。(株)日建設計環境計画室長、東京大学助教授を経て、2006年慶應義塾大学理工学部教授に就任、現在に至る。日本学術会議連携会員、日本建築学会副会長、日本LCA学会副会長を歴任。著書に『すこやかに住まう、すこやかに生きる、ゆすはら健康長寿の里づくりプロジェクト』など。

Photographed by Eriya Osaki Illustration by Shinya Okayama

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