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Photographed by Motoki Adachi
Hair&Makeup by Hiroko Takashiro
Styled by Maki Iwabuchi
Special thanks to STUDIO RAWR

幼少期からバイオリンを学び、中学1年生の冬にギターヒーローに憧れてギターをはじめた弓木さん。バイオリン演奏の経験から音感が身につき、同じ弦楽器であるギターにも挫折することなく移行できたといいます。

10代の頃からミュージシャンとして活躍し、数々のアーティストともステージを共にする中、昨年からはライブ活動を休止し単身マレーシアへ音楽留学。ライブでの生演奏こそ聞けなくなってしまったものの、近年ではYouTubeにアップしたギター動画が大きな話題を呼んでいます。

弓木英梨乃さん

華々しいキャリアを積み、一流ミュージシャンとして名を馳せる弓木さんですが、その超絶技巧ギタープレイからは想像もつかないほどに天衣無縫な佇まいも大きな魅力のひとつ。

そしてこの日、ギターのことや音楽のこと、マレーシアでの日々のことについて語ってくれた姿からも、彼女の芯の強さと飾り気のない人柄を感じることができました。

ミュージシャン 弓木英梨乃さん

弓木英梨乃さん
1990年生まれ。大阪府出身。ギタリスト、シンガーソングライター。中学生時代にビートルズの「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」に感銘を受けギターを始める。2009年メジャーデビュー。2013年、KIRINJIに加入。Base Ball Bear、秦 基博、柴咲コウらのツアーにも参加。2019年、ソロプロジェクト「弓木トイ」を始動。アルバム「みんなおもちゃになりたいのさ」をリリース。2021年、マレーシア・クアラルンプールの音楽大学へ留学。YouTubeのほか、オンラインでギター講座も展開中。
HP/Instagram/YouTube/Twitter

シャツ¥26,400、パンツ¥18,700 / ともにAVIE (アネンサール 03-6786-9267)
右イヤーカフ¥9,900、左イヤーカフ¥9,900 / RACKETS
スニーカー¥27,500 / O.T.A (Quorinest 03-6273-3536)

「お風呂上がりのリラックスタイム」プレイリスト

今回弓木さんには、普段もっとも音楽を聞くという「お風呂上がりから寝るまでの時間」に聞きたい楽曲をセレクトいただきました。

プレイリストには、最近特によく聞いているという東南アジアのインディーズ楽曲が多く並びます。

「マレーシアに行ってから、自分が住んでるところとか、周りの国の音楽ってどんな音楽なんだろうって興味を持って聞くようになりました。プレイリストには、インドネシア、マレーシア、シンガポールやタイの方の曲も入ってます」

弓木英梨乃さん

「今、Spotifyのプレイリストにめちゃくちゃ助けられてます!」と弓木さん

「昔も今も、感情を刺激してくれるような音楽が好きなんです。東南アジアの音楽ってのんびり平坦なものが多いんですけど、そういうものよりはサビでぐっとくる歌い方をするような、起伏がある曲に耳が止まります。それで自分が“日本懐かしいな”ってきゅんってなったり、ちょっと感情的になって涙が出そうになったり……。

どれもすごくメロディアスで歌心がある曲ばっかりで、お風呂上がりとか、寝る前に聞くとすごく落ち着くし、いい気持ちで1日を終えることができるんです。

ギターを弾くときも、メロディーを歌いながら考えることが多くて。グッとくるポイントだったり、��情的になるなってフレーズを選んでいると思います」

弓木英梨乃さん

日本に住んでいるとあまりなじみのないマレーシアの音楽。どのようなカルチャーが根付いているのでしょうか?

「欧米の音楽も人気だし、中国語を話す人も多いので中国語の歌もたくさんあるし、もちろんマレー語の曲や、インドの音楽を耳にすることも多いです。教育制度はイギリスの影響が大きいですが、実際の授業の内容はアメリカの大学のカリキュラムを基盤にしていたり。あとはインドネシアとかってハードロックも人気があるから、ギタリストの方でそういうプレイスタイルの方もすごく多い。

いろんな文化を持ってる人がいるので、いろんなものが混ざり合ってるなと思います。みんながみんな好きなものを聞いてるから、自分も好きなものを見つけられるのかな」

愛用しているギター、機材について

弓木英梨乃さん

日本の自宅にはライブで使う大きな機材等も保管しているものの、マレーシアへ行くにあたっては必要最低限のギターと機材を選りすぐり。

その中でも普段自宅でよく使っているという“とっておき”を教えてもらいました。

音楽制作にも欠かせないIK Multimediaのスピーカー

IK Multimedia「iLoud Micro Monitor」

マレーシアにはCDなどを持っていかず、今はスマホかパソコンで音楽を聞くことがほとんどだという弓木さん。そのためBluetoothが付いていることは、スピーカーを選ぶ上での必須条件。

使っているのは、IK Multimedia「iLoud Micro Monitor」です。

ワイヤレスで音楽を再生することも、有線でパソコンに繋ぎモニターとして使うこともできるため、音楽を聞くときや作曲をするときにも重宝しているそう。一般的なモニタースピーカーに比べると小ぶりなサイズではあるものの、家用のスピーカーとしてはちょうどよく、低音もしっかりでるバランスのよさが気に入っているといいます。

弓木英梨乃さん

「元々YAMAHAのスピーカーを使ってて、マレーシアにもそれを持って行ったんですけど、電圧が違うってことを忘れてて繋いだら一瞬で壊れちゃって(笑)。それで何か買わなきゃと思って調べて、マレーシアでも入手しやすく、値段も手頃なこれにしました」

100点満点のFenderストラトキャスター

2年半ほど前から使っているというFenderのストラトキャスターは、弓木さんのYouTube動画でもお馴染みの一台。キラッキラの笑顔で魅せる弓木さんのプレイスタイルに、ラメがかった爽やかなブルーが絶妙にマッチしているんですよね。

発売当初に一度弾いてみたところ、その弾き心地に一瞬で虜になってしまったそう。

「それまでもストラトキャスターって結構弾いてたんですけど、小さい手に合うネックだったり、音だったり、全部が自分の気に入るものに出会ったことがなかったんです。でもこれはネックもものすごく握りやすくて弾きやすくて、音もよくて

Fender 「AMERICAN ULTRA STRATOCASTER® HSS」

機能性としては、ピックアップがシングルコイル、シングルコイル、ハムバッキングってちょっと変わっていて、ライブでも実用的なんです。家にいるときはインターフェイスに直接繋いで録音したり弾いたりもするんですけど、ラインで繋いでもすごくいい音なんですよ。

何もかもがぴったり自分の好みにはまって、こんなストラト初めてだって感動したところから、ずーっと気に入って使ってます」

20本弱のギターを持っているという弓木さんですが、「何かの弾みで壊れてしまっても、もう1本同じものを買おうと思ってるくらい」お気に入りの一台なのだそう。

完全ワイヤレスで使えるYAMAHAのアンプ

YAMAHA 「THR 30Ⅱ Wireless」

初代から愛用しているというYAMAHA「THR」は、現在の「30Ⅱ Wireless」で2台目。最新モデルの「Ⅱ」から完全ワイヤレスで使えるようになり、多様なシーンで活躍しているそう。

Line 6のトランスミッターを使うとギターもワイヤレスで弾けるし、オーディオもワイヤレスで流せるし、アンプ自体を充電すれば丸ごとワイヤレスでどこにでも持っていける。

しかも『THR』のいいところは、一般的なギターアンプでオーディオを聞くとあんまりいい音じゃないんですけど、YAMAHAのオーディオ部門と共同開発しているので、すごくいい音で音楽が聞けるんですよ。ギターアンプとしても、ただのスピーカーとしてもすごく優秀。こんなすごいアンプあるんだってぐらい気に入ってます」

原点に立ち返ったマレーシアでの日々

弓木さんのギタープレイを見たことのある方ならお分かりいただけると思いますが、彼女のプレイスタイルの最大の魅力は、全身で音楽を楽しみ、それが音と一体になるグルーヴにこそあります。技術は超一流、だけど120%の笑顔で楽しそうに演奏する姿は、はじめてバンドの楽しさに触れた10代の頃のキラキラした気持ちを思い出させてくれるよう。

そしてこの日、好きな音楽について語る彼女の姿から感じたのも、やっぱりまっすぐな音楽への愛でした。彼女にとって音楽は仕事でもある以上、頭で考えることも多いはず。だけど心から楽しんで音楽に触れているように感じられるのはなぜ?

弓木英梨乃さん

「マレーシアへは勉強しに留学に行っているので、今お仕事ってほとんどしてなくて。日本にいて仕事だけしていたときはすごく意識的に音楽を聞くし、自分がもし音楽を作るとしたらこういうところを見習えるなとか、仕事の耳で聞くことが多かったんですけど、それを1回離れてマレーシアに来てから、フラットに音楽を聞くことができてるんです。

日本にいたときは、自分は何が好きなのかって、実はわからなかったりして。お仕事でもいろんなジャンルの曲を弾くし、どれも好きだから全部好きなのかな、と思ってたんですけど、マレーシアに行って普段の生活の中で音楽を聞く中で、自分はこういう音楽が好きなんだなとか、繰り返し聞いてるのってこういう曲ばっかりだなって気づくようになった」

弓木英梨乃さん

「ギタープレイも一緒で、仕事じゃなくて自分で何か弾いてみようって思ったときに、こういうフレーズが好きなんだなとか、こういう音が好きなんだなって気づけるようになりました。

それこそストラトも、日本にいたときはもっといろんなギターを使ってたんですけど、マレーシアに行っていつも手に取るギターがやっぱりこれで、このギターの音が好きなんだなとか、そういうことに気づけて。

ゆっくり音楽を聞くとか、何も考えずにギターを弾くことって、本当に大事な時間なんだなって感じてるんです」

マレーシア留学を決めた理由

弓木英梨乃さん

日本での仕事を手放して、単身見知らぬ土地へ旅立った弓木さん。でも、なぜこのタイミングで?

「30歳を迎えて、これからも音楽を仕事として続けていきたいと思ったし、いろんな人と一緒に演奏したいなって改めて思って。

そのときに自分が苦手なものとか、よくわかってない部分とか、そういう専門的なことを勉強しておきたいなと思ったんですね。そうしたら、きっともっと自信を持って演奏できるし、長く続けていけるんじゃないかなと思って。

ギターをはじめた中学生の頃から、将来はギタリストになって世界中の人と演奏したいという夢があったので、勉強する場所は外国がいいと思いました」

弓木英梨乃さん

「いろんな大学を調べたんですけど、世界音大ランキングみたいなものに、マレーシアの音楽大学が上位に入ってたんです。マレーシアで音楽を勉強するなんて考えたこともなかったけど、ここ何年かアジアの音楽にすごく興味があったし、アジアで留学して音楽を勉強するって全然想像できないからこそ、どうなるのかわからない面白さがあるなと思って、行くことにしました」

迷いはなかったですか?

「誰かに話すと止められたり、いろんな意見が入るかなと思って、ほとんど誰にも、親にも言わず。勉強しないとダメだなってすごく思ったんですよ。10代の頃から仕事として音楽をやってきて、なんとなく乗り切ってきた部分ももちろんたくさんあって、そういう自分がすごく嫌で。自分が納得した上で演奏したり音楽を作ったりしたいって気持ちがありました」

弓木英梨乃さん

「いろいろ考えるときにいつも思うのは、これをやらなかったら何年後かに後悔するかなってこと。ここで行かなかったらきっと、例えば10年後、40歳ぐらいになったときに、“あのとき数年行っとけばよかったな”って絶対思うと思ったので。後悔することが1番、自分は辛いなと思ったんです。

今やりたいことを常にやれてることが1番、私は生きてて幸せなので、そう生きられるように頑張ろうと思います」

Information
7月28日『読んでわかる、見て弾ける! アコースティックギタースタートブック』(弓木 英梨乃著、KADOKAWA)出版

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