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みなさんは、「実家の思い出」を持っていますか?

生まれ育った環境は、その後の人生に少なからず影響します。

アイフルホームとのタイアップ連載「子ども住まいラボ」。今回は、結婚を機に「家」を意識し始めた筆者が綴る“実家の記憶”をお届けします。

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騒がしい場所ほど居心地がいい。そう気づいたのは、実家を出たときのことだった。

賑やかな家族の声に、賑やかすぎる生活音。

実家で暮らし、家族と見てきたいろんな風景が、今になって浮かんでくる。

進学で一軒家へ引っ越し

20年と少し暮らした実家は、千葉県のローカル線のとある駅からすぐ近くにある。

すぐ近くというのはまったく大げさじゃなくて、試しに駅までのタイムを測ってみたところ、ダッシュで30秒だった。

そんな家に、小学校へ進学するタイミングで引っ越した。両親と、3歳の弟と、高齢になってきた祖父母の6人。

祖父母とはもともと別に暮らしていたが、せっかくなのでとみんなで暮らせる一軒家に引っ越すことになった。

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両親と川の字で寝る生活から、弟と二段ベッドで寝る生活へ。部屋には電車の音が響く。

始めはふとんをかぶりながら、「こんな音のする部屋で眠れるのかな」と思っていたのに、電車の音はあっという間に子守唄がわりになった。

駅の音と同じくらい、家の中も騒がしかった。

階段の���、家族の音

育ち盛りの弟は、とにかく階段を降りる音がうるさかった。急ぐ用事もないのに全力で走って降りてくる。

足の悪い祖母は、みしり、みしりと音をたてながらゆっくり降りてくる。でも、誰よりドアを閉める音が大きいのも祖母だった。

家族の音が蓄積されていくと、声がしなくても誰がいるのかわかるようになる。

多くの音に囲まれて育つと、しんと静まり返ったときになんとなく不安になる。人の気配が感じられる音がすると心が落ち着く。

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実家の前にはちょっとしたスペースがあった。リビングの窓を開けると目の前にある、車1台がギリギリ停められないくらいの広さ。

庭と呼ぶには殺風景で、逆に言えば、うまく埋めれば立派な庭になるスペースだった。

人工芝を敷き詰めて、色とりどりの花の植木鉢を並べて、おまけに浮かれてパラソルのついたテーブルセットなんかを置いて、そこに人を呼ぶこともあったと思う。

引っ越したばかりの頃のことはちょっとあんまり覚えていないのだけれど、なんだかわいわい楽しくしていたな、という記憶だけがある。

でも思い出なんてそれくらいでちょうどいいと思う。

インターホンより早い来客の知らせ

音の話から少し離れてしまったが、浮かれて庭にいろいろ敷き詰めた時期を少し過ごしてから、そのスペースはまた別の役割をもつことになった。犬を飼うことになったのだ。

パラソルつきのテーブルセットの代わりに、小さな犬小屋とペットフードを入れるトレイが置かれるようになった。6人家族が、6人と1匹の家族になった。

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幼いときはよく吠える犬だった。メスのビーグル犬。数年ですっかり静かになり、私が帰宅するとちらりと横目で見て確認していた。

リビングの窓の外でするジャリっという音は、彼女が動き出したときの音だった。

首輪についたチェーンが地面を擦る音。ジャリジャリとたくさん音がするときは、犬好きの人が来たとき。インターホンよりも先に、来客を知らせてくれた。

家族とともに、変わっていく家

それから20年と少し、私はその家で暮らした。6人と1匹だった家族は時を経て5人になっていた。

朝晩と愛犬の散歩を欠かさなかった祖父が亡くなり、愛犬も後を追うように死んでしまった。

家族も変わったが、家も変わった。

母と祖母が使い込んだキッチンを新しくしたり、階段には高齢の祖母のために手すりがついたり、「家族とともに家も成長するんだな」なんて思いながら過ごしていた。

音がたくさん聞こえる家

ただ、初めてのひとり暮らしをする部屋を選んだ自分だけは何も変わっていなかった。

「なんでわざわざ、そんな車通りが多くてうるさいところに」

周りは口々にそう言い、呆れた顔をしていた。間取りが特別でもない、すごく安いというわけでもない、何か特徴があるわけでもない普通の部屋。

特筆すべきことはうるさいことだけ。

私にはそれが合っていた。人や街、家を音で覚えて感じることが合っていた。

新しい自分の部屋を音で覚えたかったし、何より人の営みを感じる音が多いほうが安心できた。駅のすぐ隣にあった実家のように。

家族がそばにいなくても、音がたくさん聞こえる家は、味方が近くにいるようで安心する。

音の記憶を詰め込む家を

去年、結婚をした。暮らしているのは住宅街にあるマンションだ。

日当たりの良さと部屋の広さ、街の雰囲気を気に入って住み始めたが、家の中に階段はないし、昼も夜もしんと静かで、人の営みからは遠いように感じられる。

「住めば都」という言葉を信じてみたし、静かな暮らしもきっと素敵だと思っていたけれど、やっぱりどうしても、ここは私にとっては都じゃなかった。

ああ引っ越したい、はやく引っ越したい。この部屋では、家族がばたばた走り回る音も、賑やかな話し声も聞こえない。私はできるだけ賑やかに、騒がしいくらいの音に囲まれて暮らしたい。音の記憶ばかりを集める生活をしたい。

家族や友達、そして未来の家族、みんなが鳴らすたくさんの音をぎゅっと詰め込める、はやくそんな家で暮らしたいのだ。

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