「あ、ここの、うまいですよね」。初めて会う男性を前に、思わず「えっ」と声が出た。
少し前に手土産にいただいた、「パティスリィ ドゥ・ボン・クーフゥ」の、陸上競技のバトンのように細くて長い華奢なケーキ。パウンドケーキに、フルーツやドライフルーツ、ナッツにチョコレートを彩りよく組み合わせ、可憐な姿にため息がこぼれた。
ひと口サイズに切り分けて、ぱくっと口に入れた途端、2度目のため息。「クランベリーとフワンボワーズのケーキ」は、酸味とコクとホワイトチョコレートの甘味とが、手をとりあって揺れながら踊り出したような優雅な味わい。
松屋銀座限定の「銀座蜂蜜バトン」は、銀座で採れた蜂蜜の品のいい甘さと、レモンやサワークリームの軽やかな風味が合間って、しっとり爽やか。そのときは紅茶に合わせたけれど、これはワインに合うのではと、しばらく後にちょっとした集まりがあったとき、私も同じものを選んで持っていったのだ。
誰より喜んだのが、意外なことに男性
参加者のほとんどが女性と聞いていたので、お酒を飲む人もそうでない人も、女性が気軽につまめるものをと選んだのだが、誰より喜んでくれたのが、意外なことに男性で、つい驚いてしまった。
女性だけが甘いものに目がないと思うのは、どうにも古風な思い込み。近頃、殊によく思う。酒場やお酒そのものに詳しい女性が当たり前にいるように、和洋菓子店や甘味を広く深く理解する男性によく出会う。
パティスリィ ドゥ・ボン・クーフゥの武蔵小山の本店を、私はまだ訪ねたことがないのだけれど、一見するとセレクトショップのような佇まいで、「自分のように甘党の男でも入りやすいケーキ屋」なのだと教えてもらう。さらに他にも、よく通う甘い店の話題に。好きなことを話すとき、男女や年齢の隔てなく、誰もがみないい顔になる。