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口に入れたときのハイな気分、収集欲をかき立てるパッケージ、なんだったらメッセージ性。連載「スナック・タイム」では、文筆家・甲斐みのりさんが、男の空腹を満たすためだけではない「嗜好品」としての食べものを紹介。第7回は、「松屋藤兵衛(まつやとうべえ)」の珠玉 織姫(たま おりひめ)。

「松屋藤兵衛(まつやとうべえ)」の珠玉 織姫(たま おりひめ)。一年でもっとも愛らしい季節の和菓子が作られるのは七夕の時期だ。年に幾度か京都で和菓子屋巡りをしながら、そう気がついた。クリスマスや雛祭りの和菓子も、華やかな色合いで愛嬌があるけれど、七夕のお菓子は夏の風物だけあって、みずみずしさが加わる。

一年でもっとも愛らしい季節の和菓子が作られるのは七夕の時期だ。年に幾度か京都で和菓子屋巡りをしながら、そう気がついた。クリスマスや雛祭りの和菓子も、華やかな色合いで愛嬌があるけれど、七夕のお菓子は夏の風物だけあって、みずみずしさが加わる。

織姫と彦星が年に一度、天の川を渡って会うことを許される日。そのため七夕は恋人の日にたとえられることも。

奈良時代まで遡る、七夕の起源

日本では七夕の夜に向けて、願いごとを書いた短冊を笹に飾る習慣が根付き、この時期は町中で七夕飾りを見かける。その起源は奈良時代にあり、五色の糸を星に供えて機織りや裁縫の上達を祈る中国の行事・乞巧奠(きこうでん)と、稲の開花時期に村の乙女が着物を織って棚に供え禊を行う日本の行事・棚機(たなばた)が融合されたそう。

七夕にまつわる和菓子のモチーフには、織姫、彦星、笹や竹、五色の短冊、七夕飾り、星、きらきら輝く天の川、ハートなどが用いられる。素材は様々あるけれど、寒天、くず、錦玉羹、錦玉糖などで、星が瞬く夜空に通じる透明感やつやを表すものが多い。この時期、私も手土産に、七夕の和菓子を選ぶことがよくあって、包みを開くと一様にロマンチックと喜ばれる。

糸玉をかたどった、京都のお菓子

京都の和菓子屋・松屋藤兵衛の「珠玉 織姫」は、西陣織の糸玉をかたどったお菓子。店があるのは、境内に織物の神を祀る末社・織姫社のある、西陣の守り神・今宮神社近く。本来は七夕のお菓子というわけではなく、西陣らしいお菓子として作られたそう。けれども次第にその名前や色合いから、七夕菓子や結婚の引き出物に選ばれるようになった。

京都の和菓子屋・松屋藤兵衛の「珠玉 織姫」は、西陣織の糸玉をかたどったお菓子。店があるのは、境内に織物の神を祀る末社・織姫社のある、西陣の守り神・今宮神社近く。本来は七夕のお菓子というわけではなく、西陣らしいお菓子として作られたそう。けれども次第にその名前や色合いから、七夕菓子や結婚の引き出物に選ばれるようになった。

砂糖と寒梅粉を使いふくよかな歯ざわりで、赤は梅肉、黄は生姜、白は胡麻、青は柚子、茶は肉桂と、色ごと違った味付けに。古代中国の陰陽五行説に基づく五色は、けがれを払う意味を持つ。行事や旬のお菓子を口にすることは、昔から日本では、身を清めることに通じた。

今年は京都で袋入りを求めたけれど、木箱入りを求めると、糸巻きを模した小さな陶皿がついてくる。七夕の季節以外にも求めることができるので、京都らしいみやげとしても。

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photo by Suzuki Ryuichiro

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