自宅で年収1000万円 「ひとり代理店」で稼ぐ新しい起業の教科書』(小宮絵美 著、日本実業出版社)には、「初期費用ゼロで、誰でもできる超具体的ノウハウ」というサブタイトルがついています。そんなことが本当に可能なのかと思われるかもしれませんが、そのバックグラウンドには著者自身の実体験があるようです。

私は商業高校を出て短大に進学し、本書を書くまで学歴にコンプレックスを持っていたほどです。そんな私がはじめた起業は、全国でも希少な「ひとり代理店」です。仕事は、お客様の販売促進のお手伝いをする「広告代理店」です。

この「ひとり代理店」の起業ノウハウを、泥臭い実体験とたくさんの実践例を紹介しながら、余すところなく詰め込んだのが本書です。(「はじめに」より)

「ひとり代理店」には初期費用はもちろんのこと、経験・資格・専門知識、デザインセンスも必要ないそう。それどころか、仕入れをして在庫を持つことも、事務所や店舗の契約も不要なのだとか。だとすれば、「なぜ稼ぐことができるのか」を知りたいところ。そこで本書では、クライアントに対してどのように声がけをし、どのように仕事を広げてきたのかを明かしているわけです。

自宅で副業・起業をはじめたい人、子育てや介護・転勤など家の事情でキャリアを手放さなければならなかった人に、どこにいても自宅起業ができることを伝えたいのです。

本書出版前にこのノウハウをあるセミナーで紹介したところ、「ひとり代理店はわたしにもできる」「定年後にやりたい」と副業・起業の選択肢として考える方もいました。

異業種の方からは、「個人事業をはじめる基盤となる内容」「どんなビジネスにも応用できる」と、声をいただきました。(「はじめに」より)

つまり著者の提唱する「ひとり代理店」は、年齢や男女差、キャリアの有無に関係なく、誰にでもチャレンジできるワークスタイルであるようです。そこできょうは第1章「経験なし・センスなし・お金なしでできる『ひとり代理店』に焦点を当て、基本的なことがらを確認してみたいと思います。

「ひとり代理店」の仕事は「販促のお手伝い」

売り上げを上げるための方法ならたくさん思いつくのに、時間がないなどの理由で、それを誰かに頼みたいと思っている人もいるもの。つまり、その「誰か」になる仕事が「ひとり代理店」。つまりはそうした会社や個人に代わって、販売促進のあれこれを代理で行うわけです。

そのため資格も、ましてや代理店登録をする必要もなし。デザインやマーケティングの専門知識が求められるわけでもなく、学歴も無関係。ただ名乗るだけだということです。いわば「ひとり代理店」は、「できる人に仕事を振る」ことが仕事なのです。

副業として始めても、起業したとしても、事前に専門知識を身につける必要はありません。

パソコンさえあれば仕事ができるので、わざわざ事務所を借りる必要はありません。オンラインで対応でき、いつ、どこにいても仕事ができます。(14ページより)

ご主人の転勤に伴って福井、愛知、広島、愛知と自宅を移動させてきたという著者も、それぞれの場所で新たなお客さまを増やしているのだといいます。

できる人に仕事を振ればいいのですから、どんな仕事でも請けられます。

メールや電話、チャットやLINEを駆使して、青森から鹿児島まで、できる人に仕事をお願いしています。年に一度しか会わない大阪のデザイナーさん、10年以上会っていない愛媛の印刷会社の営業所長さん、一度もお会いしたことのない青森の大型バナー印刷会社さんなど、大勢の「できる人」に支えられています。(19ページより)

「できる人に振る」という伝言ゲームの“真ん中の人”になれれば、代理店はスタートできるということです。(12ページより)

初期費用は考えなくていい

ひとり代理店のよいところは、機械や設備への投資などもなく、売上代金から依頼した人にフィーを払うだけで、負債を抱えることがない点。まとまったお金は必要ないため、借金をせずにスタートできるわけです。

事務所が自宅で通勤時間は0分で外出しないため、出勤用の服、カバン、靴、昼食のお弁当やランチ代、交通費などもかかりません。毎月かかる家賃などの固定費を稼がなければと追い込まれることもありません。

心を病んでしまうような苦しくて嫌な仕事は無理して受注する必要もありません。仕事を請けたとしても他の人に頼めば、最後には解決できます。(27ページより)

好きな人との好きな仕事だけを請け、その会社の売り上げを伸ばしていけばOK。ノウハウやコツをつかめば、たしかにやりやすい仕事であるといえそうです。(26ページより)

地方でも十分に稼げる

また見逃すべきでないポイントは、東京や主要都市に本社のある大企業だけがクライアントではないということ。そもそも大きな都市は競合も多いため、大企業の広告は大手広告代理店が総ざらいしてしまいます。

しかし、優良企業は地方にもたくさん存在するもの。そのため、大手が参入していない地方の優良企業には、ひとり代理店の仕事があふれているのだそうです。しかも地方は小さなコミュニティなので、いい意味で噂もすぐに広まり、紹介が増えていくようです。

同じ仕事をする人たちより、ちょっとだけ気のきいた仕事ができれば評価がぐんぐんと上がっていきます。少しだけフットワークが軽い、丁寧に仕事をしてくれる、レスポンスが早いなど、あなたにできる「ちょっとだけ」を無理ない程度にできれば、そこを気に入ってくれる人が吸い寄せられてきます。(28〜29ページより)

たしかに全国どこでも、さまざまな場所に小さなコミュニティが展開されています。それらをきちんと見据え、目の前の仕事を一生懸命やっているだけで、紹介はどんどんつながっていくというわけです。

だからこそ、「売上につながるのか、無駄ではないのか」などとは考えず、気になる人には興味を持ち、会いに行ったりすることも大切。いいかえれば、それが多くの人を紹介してもらえるようになるための「はじめの一歩」ということです。(28ページより)


著者によれば「ひとり起業」は、誰でもできるのに誰もやっていないビジネススタイルだそう。だとすればなおさら、先行きの不透明な時代を生きていくためのスキルとして、そのノウハウを学んでおくべきなのかもしれません。

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Source: 日本実業出版社