やる気はあるし、いつもがんばっているのに、どうも努力と結果の間のギャップが大きすぎる――『はかどる技術』(鈴木邦成 著、フォレスト出版)は、そんな悩みを抱えている方のために書かれたのだそうです。

興味深いのは、問題は「滞り」にあるという指摘。著者は物流・ロジスティクスの専門家として「モノの流れ」を研究している立場から、「『モノの流れ』に問題が生じるのは、そこに滞りが発生したとき」だと述べているのです。

仕事や人生設計も同じです。わざわざピーク状態をつくり出すようなスタイルで行動すれば、大きな滞りが発生して非効率になるだけです。健康のために血流をよくすることが大切なように、時間管理でも滞りの解消が不可欠なのです。(「まえがき」より)

つまり、いかにピークを避けて滞りを解消していくかが、効率的な時間管理や仕事術につながっていくということ。そこで本書においては、大学で物流を教えながら学生や社会人にアドバイスしつつ実践している立場に基づく独自の“滞り解消術”を紹介しているわけです。

専門のロジスティクス工学に加え、最新の行動経済学なども取り入れて、最小限の努力で最大限の成果を引き出せる考え方をお伝えします。(「まえがき」より)

きょうは、そんな本書の第2章「仕事の滞りを解消する」のなかから、会議についてのいくつかのポイントをピックアップしてみたいと思います。

月曜の会議はナンセンス、いちばん効率が上がるのは金曜夕方

「月曜の午前中は会議なので忙しい」という会社は多いのではないでしょうか。多くの場合は週のはじめに、その週に必要な一連のタスクをチェックしておいたり、前の週のフィードバックを行ったりするからです。

しかし「滞りの解消」という観点から考えると、毎週月曜朝に会議をするメリットはほとんどないと著者は断言しています。月曜の午前中は、1週間のうちでもっとも慌ただしい時間帯。ルーティンの事務作業が多く、急なタスクが飛び込んでくる可能性も少なくありません。

そのような時間帯に、これまでの業務のフィードバックをしたり、新企画の立案を検討する必要はないわけです。また月曜の午後も、本来ならばその週のルーティンやメインワークを本格的に行う時間帯。したがって、そんなときに進捗状況報告中心の会議をするのは時間の無駄。

仕事に本腰を入れようとしているときに「これから会議だ」ということになれば、やるべき仕事がどんどん後回しになり、その日の仕事終わりが遅くなって残業しなければならない可能性も出てきます。そうなれば、社員のモチベーションが下がっても無理はありません。(86ページより)

金曜日が会議なら時間短縮が可能

そのため、なかには月曜会議の非効率を理解している企業もあるようです。たとえば著者によれば、トヨタの週次会議は火曜の朝に行われるのだとか。また、「週の折り返し地点にあたる」ということから、水曜に週次会議を入れている企業もあるようです。

たしかに火曜や水曜なら、月曜朝のような慌ただしさを感じずに済むかもしれません。とはいえ立案や議論がメインの会議ならともかく、進捗状況報告中心の会議を火曜や水曜に行うのも考えものかもしれません。なぜならその時点で、他のタスクに忙殺されている可能性もあるからです。

では、結局のところ会議は何曜日がベストなのでしょうか?

滞りをなくすという観点から考えると、金曜夕方が最適といえます。

E社では営業の週会議は金曜日の夕方4時からと決まっています。時間も15分以内で必要事項はA4用紙1枚に箇条書きで数行以内と決めています。(88ページより)

週末直前の金曜午後に会議をしても、みんな上の空なのではないかと思いたくもなりますが、実はそうではないそう。まもなく週末という「締め切り効果」の影響で「会議を早く終わらせよう」という心理が働き、逆に効果は上がるというのです。「これが終われば休める」という気持ちになるため、冗長な会議が引き締まるわけです。(87ページより)

会議の「つまらない」は受け入れ、「長い」を徹底して改善

会議はいつも1時間と決め、毎週決まった時間に会議を行う会社も多いことでしょう。しかし、会議の目的や内容は毎回異なる場合が多いもの。

もちろん、目的や内容が変わっても、大学の講義などは「1コマ90分」というように、時間割のなかに組み込まれ、決まった時間に行われます。けれども、会議は講義とは異なります。会議の長さはメリハリを設けることで滞りをなくすこともできるのです。(95ページより)

会議が嫌われる理由は、「つまらなくて長い」ということに集約されるはず。あまりおもしろくないのは仕方がないとしても、プレゼンを工夫したり、進行を円滑にしたとしても、基本的にはまじめでリラックスできない内容になってしまうものであるわけです。そこで重要な意味を持つのが「メリハリ」。

たとえば、毎週の定例会議で、「議論の時間がほしい」などの声が強く、会議時間をいきなり15分に短縮、固定するのが難しければ、原則1時間としつつも、「月に一度は15分以内に終わらせるようにする」といった具合に、段階的に移行させていくのです。それによって急な改変で生じる可能性のある滞りの発生を防ぐことができます。(96ページより)

基本的に会議の議題がひとつだとすれば、「15分」は説明・承認・共有という一連のプロセスを行うのに十分な時間であるはず。多くの場合、一週間で出てくる課題は4つもないでしょうから、1時間(15分×4)もかからないことになります。

「うちの会社は毎週、膨大な数の案件が出てくる」ということであれば、必要とされるのは、「本当にそれが会議で議論するに値する案件なのか」「個別の打ち合わせで解決できないのか」を事前によく吟味しておくこと

一般的な会社では、大人数での会議より、個別ミーティングで解決できる案件のほうがはるかに多いと考えられます。

つまり個別ミーティングをしっかりやれば、定例会議では承認と共有だけでこと足りるわけです。理想にこだわるのではなく、実現可能なレベルで滞りをなくしておくことが大切であるということです。(94ページより)


滞りをなくし、時間管理のムダ、ムラ、ムリをなくせば、「少ししかやっていないのに、営業成績が伸びた」「資格取得も、昇進も、転職も満足できた」などの成果を出せるようになるかもしれないと著者はいいます。そこで本書を参考にしながら、ぜひとも滞りを解消したいものです。

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Source: フォレスト出版