午前中、カフェインを摂取するのに最適な時間は何時だと思いますか?
もしこれについてあまり深く考えたことがないのであれば、コーヒーを飲むのはおそらく朝のできるだけ早い時間でしょう。
一方で、もしあなたが常に生活を最適化する方法(いわゆる“ライフハック”)を探しているのなら、「コーヒーを飲むのは午前半まで待ったほうがいい」というアドバイスを聞いたことがあるかもしれません。
そんなあなたに朗報があります。この“ライフハック”はやめても大丈夫です。午前中、カフェインを摂取する時間を遅らせる必要はありません。コーヒーは飲みたいときに飲んでください。
寝起きにコーヒーを飲むのはNG?
私たちも過去にこのライフハックを推奨したことがあります。2013年に、神経科学の博士課程の学生が「午前中9:30から11:30の間がコーヒーを飲むのに最適な時間だ」と主張するブログ記事を紹介たのです。
それ以来、朝カフェインを摂取する時間を遅らせることは、バイオハッキングのポッドキャスターやTikTokのヨガ・ホルモンコーチ、その他信憑性に疑問のあるインフルエンサーたちの間で話題となってきました。
その一方で、科学者たちはカフェイン摂取の時間を遅らせる効果について実際に調査しており、その結果を共有したいと考えています。
3月、スポーツ科学者のグループがカフェインに関する一般的な迷信に対する反論を発表しました。
この反論には、午前半ばにコーヒーを飲むことは、「早朝にコーヒーを飲むことよりもより健康的である」または「より効果的である」という主張に対する考察も含まれていました。
ネタバレですが、彼らの反論によるとこの主張は成立しません。多くの人は、朝一番に眠いと感じるときにカフェインを摂取すると最も良い結果が得られるでしょう。
朝一コーヒーNG議論その1:コルチゾール
コルチゾールは、体がさまざまなストレス(良いものも悪いものも)に対処するために使用するホルモンです。
人生におけるすべての問題がコルチゾールの不均衡によるものだと納得させようとするインフルエンサーを信じないでください。ほとんどの場合、コルチゾールの変動は良い理由で起こっており、心配する必要はありません。
では、カフェインの出番はどこにあるのでしょうか。
確かに、カフェインが私たちの体内のコルチゾールレベルを上昇させる可能性があるという証拠はあります。
反コルチゾールのインフルエンサーは、コルチゾールの急上昇が常に悪いことであり(これは真実ではありません)カフェイン摂取を遅らせることで、午前中にコルチゾールを全体的に低く保てるのだと主張しようとします(しかし実際の研究によって十分に裏付けされていません)。
この神話を打破する研究の著者たちが指摘するように、このコルチゾールへの影響は早朝に限ったことではありません。
カフェイン摂取の時間を遅らせると、コルチゾール分泌量の急上昇を回避できるのではなく、単に上昇を遅らせることになるのです。
また、毎朝カフェインを摂る習慣がある場合、コルチゾールの分泌反応は時間の経過とともに小さくなり、より多量のカフェイン(1日300mg以上など)を摂る習慣のある人については、その反応はまったく起こらない可能性があることが証拠により示されています。
より理にかなった議論があります。それは2013年の記事でその学生が主張したものでした。
その学生によると、朝には自然とコルチゾールの分泌量が上昇し、それが目覚めに寄与するというのです。もし朝何もしなくてもコルチゾール分泌量が上昇するのであれば、なぜわざわざカフェインを摂取する必要があるのでしょうか?
これは、朝にカフェインを摂らないほうがいいという理由ではありません。朝、ベッドから飛び起きた時にエネルギーに満ち溢れているような変わり者には、こういう選択肢もあるというだけのことです。
朝一コーヒーNG議論その2:アデノシン
この神話の別のバージョンはアデノシンに関係しています。
アデノシンは、脳細胞が互いに通信するために使用する神経伝達物質です。アデノシンは1日の間に脳内に蓄積され、眠気を引き起こす一因となります。カフェインはアデノシンの働きを阻害しますが、これがカフェインが目覚めを助ける理由の簡略版です。
カフェイン摂取の時間を遅らせる理由の1つとして、起きたばかりの時点ではアデノシンの働きが低下していることが挙げられます。であれば、アデノシンの働きを阻害する必要はないはずです。
しかし、これは真実ではありません。実際には、私たちが目覚める頃にアデノシンの働きは増加します。
神話を打破しようとする科学者たちはこれを痛烈に批判しています。
このパターンに照らして考えると、アデノシンのレベルが起床時に引き続き低下しているという主張は、アデノシンに対する睡眠覚醒サイクルの影響についての理解不足を示すものです。
カフェイン摂取の時間を遅らせることを推奨する根拠としては不適切です。
朝一コーヒーNG議論その3:午後の「クラッシュ」
カフェインの摂取時間を遅らせることで、午後のエネルギー低下を抑制することができるという考えはどうでしょうか?
その議論には私はどうも納得できません。なぜなら、そのエネルギー低下にはほかにも多くの要因が関与している可能性が高いからです(たとえば、昼食後の炭水化物による昏睡状態や、単に長時間デスクに座っていて少し疲れを感じていることなど)。
スポーツ科学者たちもこの点について考察しています。
彼らは、習慣的なカフェイン摂取が日中の「クラッシュ」とは何の関連もないことを示す研究結果を指摘しています。さらに、日中のクラッシュが本当に懸念される問題であれば、その対策として少し多めにカフェインを摂取すればよいと主張しています。
そして、朝コーヒーを飲む時間を遅らせた場合、朝一番にカフェインを摂取した場合よりも、その日の後になって2回目のカフェイン摂取が必要となるのが遅くなるかもしれません。
遅い午後の摂取はあなたの睡眠に影響を与える可能性がありますので、睡眠スケジュールについて心配なら、後でではなく早めにカフェインを摂取するのが理にかなっています。
結論「コーヒーはいつでも好きな時に飲んでください」
これらすべてを考慮すると、朝のコーヒー(またはエナジードリンク、または最近人々がカフェインを摂取しているもの)を飲む時間を遅らせる必要はありません。
とはいえ、ここで明確にしておきたいことは、あなたがいつコーヒーを飲もうとも、私はあなたのその決定を尊重するということです。
もしあなたが実際に、朝の最初のコーヒーを午前10時に飲むとその日がより良いものになると感じるなら、それはすばらしいことです。ですから私はあなたを止めるつもりはありません。
しかし、もしあなたが朝7時に起きてまだ目がぼんやりしているのに、アンドリュー・ヒューバーマンやお気に入りのTikTok健康インフルエンサーが飲んでいいと言うまでコーヒーを我慢しているなら、もうコーヒーを飲んでしまいましょう。
Source: NCBI, Sleep Foundation, ResearchGate