21世紀のビジネスに求められるのは、「言われたことをきちんと実行する力」ではなく、「自ら考える力」「共創する力」「自己進化する力」。そんな観点から、どんな環境でも、どんな国でも生き抜いていけるビジネススキルを解説しているのが『実践型クリティカルシンキング (次の10年にプロフェッショナルであり続ける人の教科書)』(佐々木裕子著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

著者は「実践型クリティカルシンキング」について、「目指すものを自ら設定し、それを戦略的に達成するための思考法」であり、「自ら考える力」の基礎になるスキルだと説明しています。が、もう少し詳しく知りたいところ。1時間目「実践型クリティカルシンキングとは」に目を向けてみましょう。

目指すものを達成するための思考ツール

物事を構造的に整理するにあたり、ロジカルシンキングはとても有効。しかし、絶対的な正解のない現代においては、それだけで結果を出すことは不可能。いま求められているのは、自ら目指すものを設定し、その目標を戦略的に達成していくこと。つまりクリティカルシンキングとは、そのための思考技術だということです。

ここで重要なのは、クリティカルシンキングが「思考技術」、すなわち「ツール」であるということ。そして、「クリティカルシンキングをすること」は目的ではないということ。いわば実践型クリティカルシンキングとは、

・「目指すもの」を達成するために、

・「自分の頭」で考え、行動し、

・「周りを動かす」ための実践的な思考技術

だというわけです。(15ページより)

1 素早く結論を出すことができる

2 経験値のない事柄でも判断できる

3 判断の根拠を説明できる

(19ページより)

そしてこれが、実践型クリティカルシンキングが求められる3つの理由。では次に、「クリティカルシンキング3つのステップ」をご紹介します。

STEP 1 目指すものを定義する

どんなことがしたいのか? どういう状況を実現したいのか? それはなぜか? 目指すべきものを具体的かつ明確に決める。ここで大事なのは、その目指すレベルと期限が決まっていることだそうです。

・いつまでに

・どのくらいのレベルのことを

・なんのために

目指すのか、シンプルかつ具体的に決め、理由についても明確に説明できるようにしておくべきだといいます。(22ページより)

STEP 2 何が問題なのかクリアにする

いま、どういう状態なのか? 目指すものとどのくらいのレベルの差があるのか? どんな課題があるのか? を本質的に理解すること。そのためには、以下が必要です。

・自分の現状を客観的に分析し、

・「目指すもの」とのギャップを認識し、

・そのギャップが生じている原因(=課題)を本質的に説明できること

(23ページより)

STEP 3 打ち手を考える

STEP2までのことを踏まえ、ギャップを埋めるためにどうすればよいか、という具体的なアクションへの落とし込みの段階。ここでも、次の点が重要になってくるとか。

・具体的なアクションをあげられること

・「なぜ、そのアクションなのか」をクリアに説明できること

(24ページより)

つまりクリティカルシンキングとは、「目指すべきものを把握し」、「現状と目指すべき姿とのギャップを見極め」、「ギャップを埋めるための具体的な施策を練る」ことだといえるでしょう。

「1時間目」「2時間目」「3時間目」「4時間目」という章立てからもわかるとおり、授業のようなスタイルで解説が進んでいきます。そして流れが理路整然としているため、無理なく理解していけるはずです。

(印南敦史)