【2023年版】ミリオネアが最も多く「移住」した国ベスト6。なぜ富裕層を惹き付けるのか?

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オーストラリア・シドニー

Steve Christo - Corbis/Getty Images

  • 推定では、2023年には12万2000人のミリオネアが外国に移住し、2022年に比べて45%の増加となった。
  • ヘンリー&パートナーズのデータによると、ミリオネアの純流入数はオーストラリアがアメリカ合衆国を上回りトップとなっている。
  • ミリオネアの純流出数が最も多かったのは中国で、インドとイギリスがそれに続いた。

ミリオネアは中国とイギリスを捨て、オーストラリアとアラブ首長国連邦に群がっている。

資産の保護と成長に関して富裕層をアドバイスしているヘンリー&パートナーズ(Henley & Partners)のデータがそう示している。同社の発表によると、2023年は記録的な数のミリオネアが外国へ移住した。多くの資産を有する個人、いわゆる富裕層の大半は米国に在住しているが、ミリオネアの流入先として最も人気が高いわけではない。

ヘンリー&パートナーズの推定では、2023年に12万2000人のミリオネアが市民権もしくは居住権を得る目的で外国へ移住した。投資可能な流動資産を最低100万ドル(約1億6000万円、1ドル=160円換算:以下同)を有する全個人の37%が米国に居住しているが、ミリオネアの流入数に関しては、オーストラリアが米国を上回った。

2023年、ミリオネアの数は2022年から45%上昇し、ヘンリー&パートナーズが2013年に調査を始めてから最高となった。

2023年前半のデータを用いたヘンリー&パートナーズの計算では、オーストラリアは同国が前年に失ったミリオネアの数よりも5200人多いミリオネアを獲得すると推定される。これは米国の2倍を超える数字だ。米国では、富裕層の増加は2100人にとどまり、流入値のランキングでは第4位だった。

その一方で、中国は2年連続でミリオネアを最も多く失った国家となった。数にして1万3500人減だ。これは第2位だったインドの6500人の2倍を超える数字だ。第3位はイギリスで、3200人を失った。以下、ミリオネアの流入数が最も多かった国と、その人気の理由を紹介する。

1. オーストラリア

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シドニーのオペラハウス

Gallo Images/Getty Images

2023年のミリオネア推定純流入数:52002022年のミリオネア純流入数(順位):3800 (2)

ヘンリー&パートナーズのアンドリュー・アモイルズ氏によると、オーストラリアはアジアとアフリカとイギリスのミリオネアから人気を集めている。

学歴、職業経験、英語能力にもとづいて候補者にポイントを授ける移民法の存在が、多くのミリオネアがオーストラリアに魅力を感じる理由になっていると、アモイルズ氏は説明する。

「オーストラリアは毎年、かなりの数のミリオネアを魅了し続けている」とアモイルズ氏は書いている。「この持続的な大量移民は、裕福な個人や専門資格をもつ人々を優遇するポイントベースの移民システムと関係していると考えられる」

また同氏は、天候、低い人口密度、安全、経済力、教育制度、税制、高度な医療制度などの要因も指摘した。

2. アラブ首長国連邦

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アラブ首長国連邦・ドバイ

Anadolu/Getty Images

2023年のミリオネア推定純流入数:45002022年のミリオネア純流入数(順位):5200 (1)

ヘンリー&パートナーズによると、アラブ首長国連邦における新規ミリオネアの数はパンデミック前の年間およそ1000人から4倍に膨れ上がった。

最近の成長は、世界各国から何百万もの人々が訪問したEXPO2020とも重なっている。世界が直面している問題の解決策を模索するために開かれた最新の万博のことだ。この万博を通じてアラブ首長国連邦は国際的な舞台に躍り出たと言われている。

アモイルズ氏はアラブ首長国連邦を「中東屈指の富の中心地」と呼び、安全な退避地としての地位、複数の主要セクターにまたがる多様な経済、低い税率、高級不動産、優良な学校制度、トップクラスの医療制度などが魅力だと評価する。

イギリス、ロシア、アフリカ、アジア、ほかの中東諸国など、さまざまな地域からミリオネアが集まる。

3. シンガポール

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シンガポール

Annice Lyn/Getty Images for the Commonwealth Games Federation

2023年のミリオネア推定純流入数:32002022年のミリオネア純流入数(順位):2900 (3)

ヘンリー&パートナーズによると、シンガポールに移住するミリオネアの大半は、ほかのアジア諸国から来ている。

また、多くのハイテク系起業家が「アジアのシリコンバレー」を標榜するシンガポールを目指すと、アモイルズ氏は指摘した。しかし、アモイルズ氏によると、同国は資産管理の点でも魅力的だそうだ。

「シンガポールはアジア最大の資産管理センターで、ファミリーオフィスのハブとしては世界トップクラスだ」と同氏は書いている。「最終的には、富裕層は自分の資産が管理される場所に引き寄せられることが多いため、これは大きな魅力になっている」

4. アメリカ合衆国

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マンハッタン

Alexander Spatari/Getty

2023年のミリオネア推定純流入数:21002022年のミリオネア純流入数(順位):1500 (5)

ヘンリー&パートナーズの発表によると、米国に移住したミリオネアの大半はアジアからやってきた。

移住富裕層の多くは、娯楽、金融サービス、ハイテク関連業界に従事している。特に人気が高いのがハイテク関連だ。テクノロジー系のスタートアップは会社を成長させるためにシリコンバレーか、ほかの米国都市に拠点を移すことが多い。

米国にはEB-5移民投資家政策があるため、投資家にとっても人気の移住先となっている。この政策があるおかげで、国内事業に少なくとも80万ドル(約1億2800万円)を投資した移民は、米国での居住権を迅速に取得できるのである。

また米国では、ビジネスオーナーがスタートアップを立ち上げたり、既存の会社を米国内で拡大したりするための道がいくつか用意されている。それらを利用するには、国内事業に投資する、みずから立ち上げる事業が公共に利益をもたらすことを証明する、などの手続きが必要になる。

5. スイス

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チューリッヒ

Allan Baxter/Getty Images

2023年のミリオネア推定純流入数:18002022年のミリオネア純流入数(順位):2200 (4)

スイスは国内の銀行制度のスキャンダルやクレディ・スイスのほぼ破綻と呼べる状況にもかかわらず、依然としてミリオネアからの人気が高い。

ヘンリー&パートナーズは、スイスがいまも魅力的なのは、同国が安全で、富裕層に良好なライフスタイルを提供しているからだと指摘する。また、同国の銀行秘密保持法も依然として高く評価されている。

スイスでは、投資を通じて市民権を得ることはできないが、スイス経済への投資、同国経済に貢献する事業の立ち上げ、もしくは年間最低27万ドルの税金を支払うことで、居住権を得るのは可能だ。

6. カナダ

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トロント

Safwat Ghabbour

2023年のミリオネア推定純流入数:16002022年のミリオネア純流入数(順位):1200 (7)

アモイルズ氏は、カナダはミリオネア、特にビジネスオーナーが新しい国を選ぶときに重視する項目を、最も多く有していると指摘する。安全で安定した環境、ライフスタイルの選択肢、富の形成、投資の多様化、ビジネスの長期的な成長の維持などだ。

「金融と法と規制環境の強靱さ、そこに加えて広範な医療制度と世界有数の教育システムがあるおかげで、同国は家族を養いながらビジネスを運営するのに特に魅力的な場所になっている」とアモイルズ氏は指摘した。

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