リセール業者が偽物のバッグを活用
高級ブランド品リセール業者のザ・リアルリアル(The RealReal)は6月13日木曜日、ニューヨークのキャナルストリートに35種類の高級ハンドバッグを揃えたポップアップストアをオープンした。しかしどれも売り物ではない。なぜなら、すべて偽物だからだ。
このポップアップは店舗ではなく、実際にはインスタレーションだ。ザ・リアルリアルはクリエイティブエージェンシーのミソロジー(Mythology)と提携し、偽物のバッグを展示する偽物の店舗を作った。ザ・リアルリアルはこの取り組みをマーケティング投資と位置づけている。その目的は、本物のバッグと偽物のバッグの違いを消費者に教え、違いを見分けられるようにし、ザ・リアルリアルの本物へのこだわりを示すことにある。
かつてはブランドとリセール業者とのあいだで裁判が起こされ注目を集めたが、現在では、リセール業者は売り手から送られてきた偽物を顧客へのマーケティングや鑑定士のトレーニングに活用している。コピー文化のおかげでラグジュアリーブランドでも低価格ブランドでも偽物が増えているため、ザ・リアルリアルのような取り組みを通じ、一般大衆による偽物の販売と購入の両方を阻止しようとしている。
「この13年で偽物は進化した。かつてないほど迅速かつ正確に製造されている」と、ザ・リアルリアルのプレジデント兼COOのラティ・サヒ・レベスク氏は話す。「当社は継続的に、技術の向上と専門鑑定士のトレーニングに多額の投資を行い、偽物が市場に出回らないよう努める」。続きを読む
リセール業者が偽物のバッグを活用
高級ブランド品リセール業者のザ・リアルリアル(The RealReal)は6月13日木曜日、ニューヨークのキャナルストリートに35種類の高級ハンドバッグを揃えたポップアップストアをオープンした。しかしどれも売り物ではない。なぜなら、すべて偽物だからだ。
このポップアップは店舗ではなく、実際にはインスタレーションだ。ザ・リアルリアルはクリエイティブエージェンシーのミソロジー(Mythology)と提携し、偽物のバッグを展示する偽物の店舗を作った。ザ・リアルリアルはこの取り組みをマーケティング投資と位置づけている。その目的は、本物のバッグと偽物のバッグの違いを消費者に教え、違いを見分けられるようにし、ザ・リアルリアルの本物へのこだわりを示すことにある。
かつてはブランドとリセール業者とのあいだで裁判が起こされ注目を集めたが、現在では、リセール業者は売り手から送られてきた偽物を顧客へのマーケティングや鑑定士のトレーニングに活用している。コピー文化のおかげでラグジュアリーブランドでも低価格ブランドでも偽物が増えているため、ザ・リアルリアルのような取り組みを通じ、一般大衆による偽物の販売と購入の両方を阻止しようとしている。
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「この13年で偽物は進化した。かつてないほど迅速かつ正確に製造されている」と、ザ・リアルリアルのプレジデント兼COOのラティ・サヒ・レベスク氏は話す。「当社は継続的に、技術の向上と専門鑑定士のトレーニングに多額の投資を行い、偽物が市場に出回らないよう努める」。
偽物はブランドの「排他性」から生じたもの
ポップアップの場所は戦略的に選ばれた。キャナルストリートは歴史的に偽物のバッグが流通する最大の市場のひとつで、よくできた偽物を路上や裏で販売する売人が何十人も普通に見つかる。ポップアップで展示されている35種類の偽物には、ラグジュアリーブランドのルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)のスピーディ(Speedy)、エルメス(Hermes)のバーキン(Birkin)、シャネル(Chanel)のフラップバッグ(Flap Bag)など、人気があって偽物も多いバッグが含まれている。
ザ・リアルリアルは9月まで、ポップアップストアの最上階で定期的にイベントを開催する。たとえば毎月1日は、偽物のバッグを提出すると、同じバッグの本物が当たる抽選に参加できる。ハンドバッグ、革製品、鑑定の各業界の専門家によるディスカッションも実施する。
ラグジュアリーブランドは自社のブランドを守ろうとしており、偽物の問題はブランドとリセール業者との対立を引き起こしている。シャネルは過剰なほど防衛的であることで知られており、偽物を販売する可能性および販売するバッグの真正性を主張する権利をめぐってザ・リアルリアルとビンテージファッションショップのワットゴーズアラウンドカムズアラウンド(What Goes Around Comes Around)を訴えている。一方、スポーツ用品ブランドのナイキ(Nike)も同様の懸念からオンラインマーケットプレイスのStockXを訴えている。
ザ・リアルリアルの最高クリエイティブ責任者であるクリステン・ナイマン氏は、偽物はラグジュアリー業界では避けられない問題だと語った。しかし、バッグとその製造方法を分析することは、鑑定士にとっても消費者にとっても貴重な学習ツールになり得るという。
「偽物は複雑な問題だ」と同氏は述べた。「ザ・リアルリアルも同様だが、偽物はもともとラグジュアリーファッションの排他性から生じたものだ。だからこそ、我々はあらゆる知識を共有し、デザイナーやオピニオンリーダー、職人、そしてコミュニティの意見を聞こうと思っている」。
積極的なコスト削減の結果、ザ・リアルリアルの業績はこの6カ月間で回復し、今年3月には四半期の収益が約1億5000万ドル(約238億円)となり、ついに黒字化を達成した。
「教育ツール」として活用
ラグジュアリーリセールプラットフォームのファッションファイル(Fashionphile)の共同創業者であるベン・ヘミンガー氏は米グロッシーに対し、長年にわたって受け取ってきた偽物のバッグが会社の倉庫に山積みになっていると話した。
「以前は偽物のバッグを無料で返送していたが、やがてユーザーは真贋がわからないものを何でも送ってくるようになった」と、同氏は6月10〜12日に米マイアミで開催されたグロッシーeコマースサミット(Glossy E-commerce Summit)で語った。「そこで、偽物のバッグには50ドル(約8000円)の返送料を課すようにしたところ、そういうケースが減った。また、バッグが偽物だとわかった場合、本当に偽物だとは知らなかった人には、そのまま返送しないでほしいと言われることも多い」。
ヘミンガー氏は、ファッションファイルでは法的理由と倫理的理由の両方により、偽物のバッグのリセールや無料配布は一切していないと話した。代わりに、バッグは教育ツールとして利用されている。ファッションファイルの鑑定チームは、偽物を分解し、本物のバッグと比較し、偽物のバッグによくある識別可能な特徴をカタログ化する。バッグは機能的なウォールアートとしても役立つと同氏はいう。分解された偽物のルイ・ヴィトン・スピーディバッグは、ファッションファイルのニューヨークオフィスとカリフォルニアオフィスに飾られている。
「多くの人が、偽物をこっそり横流ししてくれないかと頼んでくるが、そんなことは絶対にしない」とヘミンガー氏はいった。「偽物は、学術的に使うか、破壊するかだ」。
[原文:Fashion Briefing:What to do with all those counterfeit bags]
DANNY PARISI(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
Image via The RealReal
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