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美しい村を守れる?スイスのラウタ―ブルンネンが入村料を課すことを検討【Steenz Breaking News】

美しい村を守れる?スイスのラウタ―ブルンネンが入村料を課すことを検討【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、スイスの小さな村における入村料の導入検討についてご紹介します。

アルプスの自然に囲まれた美しい村「ラウタ―ブルンネン」

スイス中部のベルン州南部に位置する「ラウタ―ブルンネン」は、アルプスの山中にある美しい村として知られています。周囲に多数の渓流や滝があることでも有名で、そのうちのひとつである「シュタウブバッハの滝」は、約300mの高さから水が真っ直ぐに落ちてくる様子が圧巻です。

18世紀後半から19世紀前半に活動したドイツ人作家・詩人のヨハン・ヴォルフガング・ゲーテがこの滝を訪れた際は、あまりの美しさに感動して、後にシューベルトの楽曲となる『Gesang der Geister über den Wassern(水の上の精霊の歌)』という詩を書いたといわれています。

そんな美しい村であるラウタ―ブルンネンですが、近年、その景色を見ようと多くの観光客が訪れるようになり、オーバーツーリズムが大きな問題になっています。駐車場や公共交通機関には観光客が集中し、道路にはポイ捨てされたゴミが目立つようになりました。また、高い金額を払ってくれる観光客に合わせて、家賃をはじめとした物価の上昇も起きているそう。

そこで地方当局は、住民たちの平穏な日々を守るため、解決策を検討し始めました。

日帰り客を対象とした入村料の導入

地方当局がオーバーツーリズム対策案として検討しているのが、「入村料」の導入です。現時点ではまだ検討段階ではありますが、日帰り観光客を対象に、5〜10ユーロの入村料を課すという内容です。対象は自家用車で訪れる観光客に限定され、公共交通機関を使って訪れる人や、村に宿泊する人は除外されるそうです。入村料の支払いは、スマートフォンアプリでおこなわれます。

もし仮に、この対策案が承認されたとしても、料金の導入方法や検査方法など、細かい部分を詰める必要があるため、すぐに導入されるわけではないようです。ちなみに、入場料を徴収するという案は、イタリアの観光都市・ベネチアがおこなっていたものを参考にしているそう。

確かに、村に入るのに特別な料金がかかるとなると、ひとつのハードルとなるため、来訪者数は抑制され、マナー向上にもつながりそうな気はしますが、実際はどうなのでしょうか。

入村料の導入が物議を醸しているなか、値上げをする地域も

こうした入村料などの導入は、世界各国で増えています。例えば、ラウタ―ブルンネンが参考にしたベネチアでは、2024年4月25日から試験的に、日帰り観光客を対象とした5ユーロの入場料徴収をを開始しました。週末と祝日が対象であり、期間は7月までの29日間の予定です。

しかしこの対策、どうやらいくつかの問題も浮上しているよう。試験期間に、ベネチアを訪れるには専用のQRコードが必要になりますが、ウェブサイトの操作が難しく手間がかかり、初日から観光客に混乱を招いてしまいました。その他にも、入場料は課されないものの、何故かベネチアを通る学生や通勤者に対しても、QRコードの取得が求められるなどトラブルも目立ちました。

このようなトラブルに対応しつつ、ベネチアが4月25日から5月5日までに集めた金額は、総額977,430ユーロ。しかし観光客の減少にはつながっていないため、「対策は失敗ではないか」という批判もあがっています。ちなみに試験期間終了後には、入場料の値上げに加えて、罰金も導入される予定です。

ベネチアのように、入場料の導入による効果に疑問が抱かれている都市もある一方で、大胆な値上げに踏み切る地域もあります。独自の生態系を築き多くの固有種が生息するガラパゴス諸島では、2024年8月から一部の訪問者を除き、これまで100ドルだった入場料が、一気に2倍の200ドルになります。今回の値上げは、観光客の減少による野生生物に対する圧力の軽減や、生態系の保護、観光産業の支援などが目的だそうです。

以前から、観光客による外来種の持ち込みに悩まされていたガラパゴス諸島。倍の値上げがどのような影響をもたらすのか、注目したいですね。

入場料制度の導入に今後も注目

こうした入場料制度は、その目的が「資金収集」のみであれば、最適といえるかもしれません。しかし観光客数の抑制という視点で見ると、ベストアンサーとはいえないのではないでしょうか。

とはいえ、地域の課題をきちんと把握し、適正な金額や導入方法などを設定できれば、狙いどおりの結果につながっていく可能性もありそうです。そのため、トライアンドエラーを繰り返しながらも、その方法をさまざまな国や地域が模索し、ゆくゆくはオーバーツーリズム問題の解決につながる成果を挙げられることに期待したいですね。

Reference:
Overcrowded Swiss village considers Venice-style entry fee for visitors who arrive by car|euro.news
Evasion, confusion and protests: How effective is Venice’s new tourist tax?|euro.news
The Galapagos islands are cracking down on overtourism by doubling their entry fee|euro.news

Image:スイス政府観光局

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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