【PCゲーム極☆道】第167回『OUTBRK』 巨大竜巻を車に乗って追跡するストームチ��イサーシムはリアルな空の描写も魅力

マルチプレイにも対応

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お仕事系ゲームの需要がハンパない。以前はPCオタクのみが遊んでいるオタク向けゲームという印象が強かったですが、さまざまな作品が登場するなかでシステムや取り扱うテーマが洗練されていき、広い層に受け入れられるゲームジャンルへと成長しました。いまや多くの方が掃除やら修理やら、さまざまなお仕事をゲームで楽しんでいます。

しかし、お仕事系ゲームというジャンルはその洗練の過程で業務を簡略・単純化しゲームへと変換する手法が確立され、その手法に適した業務ばかりがゲーム化されている印象があります。掃除・リフォームとか! 修理や組み立てとか! 解体作業とか! 小売店での店出し接客とか! けっこう似たゲームが多いと、みなさんも感じているのではないでしょうか?

我々には、もっとヤベェ仕事のゲームが必要です! ということでみなさんのまだ知らないかもしれないPCゲームの世界を紹介する「PCゲーム極☆道(きわめみち)」。今回は命がけの観測作業に挑む異色のお仕事系ゲーム『OUTBRK』を紹介します。

『OUTBRK』はカナダのゲームディベロッパーであるSublimeが早期アクセスを開始したゲームで、2024年6月28日にリリースされました。

早期アクセス初期かと避ける方も多いでしょうが、実は本作の開発開始は少なく見積もっても6年以上前なんです。とんでもなく長い時間をかけて、やっとお客様に売れるところまでこぎつけたのが今なんですね。あとで説明しますが本作には非常に大掛かりなシステムが実装されており、これの開発にとんでもなく手間と時間がかかっています。

同チームはこの長い年月をこれ1本に注いでおり、ほかに商業作品は出していません。チームの今後を決める大一番が、まさにこの早期アクセスローンチなんです。気になった方は是が非でも遊んでほしいところです。

さて、『OUTBRK』が描くのは特殊な気象観測員「ストームチェイサー」です。

アメリカはその地形・天候的特性によりトルネードが多く発生します。当然それによる被害も大きく、無視できる存在ではありません。そこで出番となるのがストームチェイサーです。ストームチェイサーは発生した危険な積乱雲を車で文字通り追いかけ、竜巻などの災害の発生を撮影。可能ならば観測機材を設置してその規模を測定します。もちろん、竜巻の間近まで迫るため危険は付き物です。

危険を冒して、勝ち取った映像やデータは研究機関へ渡されるほか、衝撃映像を求めるメディアへも提供されます。彼らのおかげで竜巻の脅威を我々は知ることができるというわけです。

そんなデンジャラスだけど、なんだかプロっぽくてカッコいいストームチェイサーを体験できるのが『OUTBRK』なんです。

本作はストームチェイサーの仕事を忠実に描くため、なんと独自の気象再現システムを実装しています。

ゲームを開始すると複数あるマップから1つが選ばれ、自動生成された気象シナリオがマップ上に展開されます。気象シナリオは発生した積乱雲のほか、大気圧や風向きや風速、雨や雹といった天候などなどさまざまな要素が含まれます。これらがゲーム開始と同時に、現実さながらに作用しあい、リアルタイムに動き、危険な天候を形作っていくわけです。

このゲームの空を見上げると、みなさんも一度は見たことがあるような、激しい嵐を予感させるあの怪しい空気を感じられます。空全体をシミュレートするシステムを実装しているのですから当たり前ですが、雲の動きひとつひとつが非常にリアルです。

「いやいや、雲の動きをリアルに描く背景用のシステムだって最近では一般的じゃん?」と思う方もいるでしょう。ですがそうした背景としての空と、主役としての空では決定的に違うところがあるんですよ。上のSSにも写っていますが、それは雲と天候の連動です。上記のSSでは積乱雲が遠くに見えますが、その直下にはどうやら大雨が降っているらしく、雲と地面の間に雨柱が立っているのがわかります。

このゲームは嵐を追うゲームだからこそ、雨と晴れのグラデーションもきっちりとシミュレートされているわけです。マジですごい。

当然、雨と晴れが別々に存在する規模感のゲームですからプレイヤーが走り回るマップも超巨大です。数10km四方の広大なマップが用意されており、積乱雲に近づくために車を運転しているだけで10分以上もかかるほどです。

さすがにこのゲームは天候のシミュレーションにそのすべてを捧げているため、マップにNPCの歩行者や走行車がいないただただ広大な世界が広がっているだけではありますが……。ただ、この地域一帯に竜巻警報が発令され、住民がみんな避難している非常事態だと考えれば、納得できる気はします。

とにかくプレイヤーは車でこの広大すぎるマップを駆け巡り、竜巻発生という決定的瞬間をカメラに捉えなければなりません。

このゲームではマップに雲レーダーの情報や、mlCAPE(地上0m~500mの平均空気塊を持ち上げたと仮定した対流有効位置エネルギーのこと。めちゃくちゃ専門的だけど覚えると有利だ!)、風向風速といった情報が表示できるようになっています。

スライドバーを動かせば、10分前までの情報も参照できるので、まずは雲の動きを確認し、狙う巨大積乱雲の進路へと先回りをしましょう。

積乱雲が成長してくると、雷頻発予想区域とトルネード発生予想区域が雲レーダー画面に四角で表示される仕様となっています。狙った積乱雲が予想通り成長し予想区域が設定が設定されるようになったら、トルネード観測の可能性が高い予想区域の中へと飛び込み、トルネード発生の機を待ちましょう。

なお、このゲームでは車のガソリン要素が存在するため、移動に合わせて定期的にガソリンスタンドに立ち寄り燃料補充を行う必要もあります。雲の進行予想、道路、ガソリンスタンドの位置と補給タイミングをしっかり考えた計画的な立ち回りも重要です。

しかし、いかにコンピュータがはじき出したトルネード発生予想とはいえ、相手は巨大な積乱雲。その範囲は広大です。上手く自分の近くにトルネードが発生すればいいですが、遠くに発生すると視認することすら叶わないかもしれません。それに写真だけでなく、観測機をトルネード直下に事前に設置しての詳細なデータ取得もプレイヤーには求められます。どうにかして、トルネードへと肉薄しなければ!

そこで重要なのが、同業者の存在です。なんとこのゲーム、オンラインマルチプレイタイトルなんですよ!

マッチングした他プレイヤーたちと情報を共有し、トルネードへと迫るのがこのゲームの基本ムーブとなります。ゲーム内ボイスチャットなどを活用することも可能ですが、もっとも重要なのはリポートシステム��す。

トルネードや壁雲といった特殊な状況を観測した場合、ゲーム内のスマートフォンからリポートすることで、プレイヤー全体にその目撃情報を共有することが可能です。上SSのマップに記された丸いマークが共有された目撃情報です。このリポートは行うだけで報酬が得られるうえに先に報告した人ほどその報酬が大きくなるシステムとなっています、共有したほうが断然おトク。しかもリポートと写真撮影は別々に報酬が支払われるため、やらない手はありません。結果として、プレイヤー全員がオイシイ思いをできるシステムというわけです。

また、ゲーム初級者はなんか強そうな車に乗っているプレイヤー(このゲームの報酬は見た目変更アイテムの購入にしか使わないので、ゴツい車に乗っているやつほどやりこみ勢)にひっついていくだけで、ゲームの基本的な流れを学習できるようにもなっています。

ゲームの性質上、1度の追跡が1時間近くかかるゲームのため、ちょっとした連帯感を感じられるのもいいところです。あと、膨大な気象情報を全プレイヤー間で同期しているというのも、なかなかヤバいところだと思います。すごすぎんか?

時間をかけて、トルネードを発見したときの興奮はたまらないものがあります。本来なら危険が伴うストームチェイサーというお仕事ですが、ゲームではその興奮だけをどっぷり味わうことができるわけです。特に発生の瞬間を目撃したときの興奮はすごくて、「ついに来た!」、「待ちに待ったぞ!」と心臓が高鳴ります。いや、ほんと楽しい。

一応補足しておきます。興奮だけが味わえるとは言いましたが、本作でもトルネードの危険はゲームシステムとして用意されています。竜巻に近づけば石やら木やらが飛んでくるわ、雹は降ってくるわ、下手すれば風で車がふっとばされるわ、散々な目に会います。このゲームでもトルネードが通り過ぎたあとは森も街もメチャクチャに破壊されますから、当然です。

大事な車両がダメージをうけたり、公共物を壊してしまったりすると修理費用が発生するシステムとなっており、追跡終了時(ガソリンスタンドに行けばいつでも追跡を終了可能)に小一時間かけて手に入れた儲けから天引きされてしまいます。

広大なマップから竜巻の発生地点を予測し、目撃情報と照らし合わせて自身の観測ポイントを決め、安全マージンを取りつつ特ダネをゲットする。ストームチェイサーのお仕事を忠実に再現したのが本作なんですね。

……ただ、インディー開発の早期アクセス開始初期のマイナー作だからでしょう。悲しいかなマッチングは時間を選ばないと厳しい印象があります。

というのも本作は記事公開現在、北米サーバーと欧州サーバーの2つしかサーバーが用意されていないため、アジア圏のワタシたちが遊ぼうとすると、向こうのゴールデンタイムにあわせて遊ばないとなかなかマッチングができないんです。めっちゃいいゲームなのに、あまりにも辛い。記事公開段階のビルドではカスタムマッチ機能は用意されていないため、お友達と遊ぶのも厳しい印象です。

いや、日本のゴールデンタイムだと誰も遊んでいないので。お友達5人ぐらいで一斉にマッチングを開始すればできないこともない気はしますが……。

オフラインのソロモードはちゃんと用意されているので、助け合い要素を諦めれば遊ぶこと自体は可能です。むしろ、1人で発見できたときの達成感はそれはそれでデカい気はします。上のリザルトはソロで追跡を行ったものですが、気象学の知識がないワタシでも案外どうにかなりました。

とにかくほかにないテーマのお仕事系ゲームであり、かつ長い時間をかけて生み出された気象シミュレーションがあまりにもすごいので、ぜひとも遊んでほしいゲームです。願わくばこの記事を発端に日本でバカ売れして、アジアサーバーが建てられたら最高なのに……なんて夢を見てしまうぐらいには楽しいので。興味のある方はぜひぜひストームチェイサーという特殊なお仕事に挑戦してみてください。

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