サイエンス

新型コロナの後遺症「ロングCOVID」に悩む患者の全身スキャンで「体中の組織でT細胞が異常に活性化」していることが明らかに


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した後も疲労感や息切れ、筋力の低下といったさまざまな症状が続くロングCOVIDによって、仕事や日常生活などに影響が生じるケースが報告されています。カリフォルニア大学サンフランシスコ校などの研究チームがCOVID-19から回復した患者の全身スキャンを実施すると、脳幹や脊髄、骨髄などの組織にT細胞の異常な活性化が確認されました。

Tissue-based T cell activation and viral RNA persist for up to 2 years after SARS-CoV-2 infection | Science Translational Medicine
https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.adk3295


COVID's Hidden Toll: Full-Body Scans Reveal Long-Term Immune Effects : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/covids-hidden-toll-full-body-scans-reveal-long-term-immune-effects

研究チームは、COVID-19から回復した24人の患者の全身を陽電子放射断層撮影(PET)を使用しスキャンしました。その結果、COVID-19のパンデミック前の全身スキャンと比較して、脳幹や脊髄、骨髄、鼻、喉、一部のリンパ節、心臓と肺の組織、��壁でT細胞の異常な活性化が確認されています。

これらの結果は、ロングCOVIDに悩む18人の被験者と、COVID-19から完全に回復した6人の被験者から得られています。さらなる調査の結果、脊髄や腸壁などの一部の組織におけるT細胞の活性化は、完全に回復した患者よりも、ロングCOVIDの症状がある患者によって多く報告されました。また、ロングCOVIDによる呼吸器系の症状を抱えている患者では、肺と肺動脈壁でT細胞の異常な活性化が明らかになりました。


一方で、COVID-19から完全に回復した被験者でも、パンデミック前と比べると、多くの臓器でT細胞活性に持続的な変化が生じていることが報告されています。研究チームによると、最初にCOVID-19に感染してから2年半が経過してもT細胞が活性化しているケースもあったとのこと。

研究チームは「一部の患者では、T細胞の活性化が最初のCOVID-19の発症後何年にもわたって持続することが明らかとなっており���ロングCOVIDの症状に関連している可能性があります」「これらの観察結果を統合すると、臨床的に軽度なCOVID-19の感染でも、組織ベースの免疫恒常性に長期的な影響を及ぼしかねないことが判明しました」と述べています。

これまでの研究で、COVID-19への罹患は筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)引き起こすとされるエプスタインバーウイルスなど、体内に眠る他のウイルスを目覚めさせる可能性が示唆されています。


また、患者への脳スキャンの結果、ME/CFSは複数の内臓系が影響を受ける「明らかに生物学的」なものという研究結果も報告されており、研究チームは「今回の研究は、COVID-19が一過性の急性感染症であるという通念に挑戦したものです」と語りました。

科学系メディアのScience Alertは「ロングCOVIDによる免疫系の影響をマッピングする技術に感心が寄せられている今、より大きなコホートで今回の研究結果を確認する必要があります」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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