上位の批判的レビュー
5つ星のうち1.0話が雑(ネタバレあり)
2021年10月15日に日本でレビュー済み
試し読みで雰囲気が好みだったので買ってみたがいまいちだった
なにか別に本編があって、その脇役をメインに据えた外伝なのか?と思うぐらい唐突に始まる
背景説明がくどくないのはいいけど強引すぎる
海外の人の文章を日本語に翻訳したのかと思うぐらいたまに言い回しや会話の流れが不自然になる
「すれ違いから始まった恋がやり取りを重ねるうちに本物へと変わる」みたいなのを期待して読み始めたが(実際オチはそうなるのだが)、しょっぱな桐野が高瀬の自分への思慕を利用してセックスに持ち込み、それ以降もたびたび高瀬を襲ってセックスしつつモノローグでグダグダ高瀬に対する自分の気持ちを一方的に垂れ流すのが続くので、種類の異なる二人の気持ちが交際を経て恋愛感情に変化するという感じがあまりしなかった
憧れにすぎなかったはずの高瀬の桐野への思慕も、桐野に半ば強引に抱かれたのに「彼氏にはなれないけど」という恋愛感情を含む片思いに変化していてご都合主義的な印象
終盤、主人公の桐野が高瀬を突き放し、彼との生活を振り切るように部屋の中の思い出の品を整理していくけど、なんか桐野がグダグダ思い悩みながらとりあえず頻繁に高瀬を襲ってセックスするシーンをダラダラ見せられていただけという印象だったので、「これまでの二人の思い出の詰まった部屋・小物……」みたいな雰囲気を出されても感傷���浸れなかった 小物に対するエピソードもとくにないし
「この部屋で高瀬を無理やり抱いて嫌がられただろうからその恐怖が消えるようこの部屋を彼の好きなもので埋め尽くしてやろう」という非常に押し付けがましい理由で揃えたインテリアを前に「これ高瀬が好きだったな」と言われても……
ラストで、桐野に対して恋愛感情を懐きつつもいつか関係が解消するかもしれないとどこか割り切っており、実際桐野が消えたとき諦めていた高瀬が、戻ってきた桐野に対して「僕執着心が強いんですよ」みたいなことを言っているのも違和感があった
帯にある「先輩には僕なにも望んでませんから」という高瀬のコマでいわゆる”ヤンデレ”なのかなという印象を受けたが、実際読むとあれは少々表紙(帯)詐欺のように見える 執着愛要素はかなり薄い
また、事あるごとに挟まれるセックスシーンも描写がいまいちでいわゆる顔漫画に近い感じがした
ピアノを題材にしているわりに演奏シーンなどの描写が薄いことも不満だった
桐野のピアノの腕がどのぐらいであったのかいまいち分かりづらい
高瀬が感動して影響を受けたことや周りの人間の評価・物言いからなんとなく昔はそれなりだったんだろうなというのはもちろんわかる
ただどうしてもこういうのは「昔は神童の名をほしいままにしたが今は見る影もない青年が」みたいなギャップを期待してしまうので、過去の栄光の描写が薄くていまいちだった
「高瀬がすごいと言ってるので桐野はすごい」
「桐野が嫉妬してるから&周りの人が褒めているから高瀬の腕もすごい」
みたいな、周りの評価、基本伝聞でその人物像を説明しようとしている感じ
その人自身を描いてその人の魅力を描写するシーンが少ないように感じられた
また、親の呪縛みたいなものもうっすらでとにかく中途半端
父親は母親(あるいはそのピアノの才能)にある程度執着していたようだが、母親が亡くなってすぐ再婚したのならその執着も早くに冷めていそうなもので、=息子に対する関心・息子のピアノに対する関心も早期に薄れていそうだがそのわりに金のかかる音大(とは明記されていなかったけど描写からしておそらく)に進学させてくれたというのも不思議
本筋ではないところではあるがもう少し丁寧に描いてほしかった
ピアノも執着愛も親との確執もちょっと重めの要素が欲しくてとりあえずくっつけてみたような印象 それぞれ深堀りはされないし、それぞれの要素の描写自体が薄っぺらい
ラストも桐野が高瀬の才能にあてられてピアニストとして復帰、とかでもないし、とにかく物足りなかった
試し読みで読んだ感じ、もて遊んでやろうと近づいた桐野を純朴なふりの高瀬がその奥底にある執着で絡めて堕としていくみたいなストーリーだと思っていたのでいまいちだった
あと、構図がたまにアップで読みづらいというか分かりづらい
漫画初心者がよくやるような、コマに「ドンッ」の文字だけ書いてそれでぶつかった説明終わり、みたいなのが多い そりゃわかるんだけど少しイラッとしてしまう