上位の批判的レビュー
5つ星のうち3.0子産ではなく鄭国史として、完全版が読みたい
2016年5月2日に日本でレビュー済み
小説としては満点です。ひさびさにはらはらどきどきしながら二日で読めました。
著者のファンになりました。
少し口惜しいのは、肝心の子産の活躍についての描写は、上下巻合わせてもの三十パーセント以下のボリュームで、物足りなかったです。とくに上巻は、活躍する前の時代のみで、時代環境面の描写しかありません 。(小説としてはむしろ上巻の方が面白いですが。)
原因として、読者を引きつける戦争、外交、政争が、メーンで書かれているためです。生臭く確かに読者を飽きさせないですが、子産が活躍する地味な政策面の描写が薄く、争い事と同じ様に、時代を跨いだ引用や、わき道解説分析など行っていただきたかったです。結果的に政治家子産を読もうと、本書に触手を伸ばした当初の目的には、物足りないと感じました。
この構成比なら、いっそのこと鄭国史として、再編成して欲しいと思います。大国に振り回される小国というテーマは、現代の国際情勢においても大きな課題ですし、いち個人としてもビジネスや処世術として、大変参考になるのじゃないかと思います。 論語など、後世の名著が生み出されたきっかけとなる先人の知恵が、この時代の各国の歴史に刻まれています。